第24話「守りたいもの」 ページ27
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桜の花びらがひらひらと風に揺れる季節だった。
私は厚い本を閉じ、外へ向かった。
第24話「守りたいもの」
リビングに向かうと強くなっていく朝ごはんの匂い。ジューとベーコンの焼ける音が響く。
「Aおはよう!」
「おはよう、炭治郎。」
それはまるで当たり前のような光景で、でもまるで新鮮な光景だった。
「おはようA〜〜!」
「おはよう、善逸!」
そして善逸が朝イチで抱きついてくるのも、日課だけどそれもまたいつもよりも温かく感じる。
「…ん?何だ?その本?」
善逸は私の持ってる本を見てそう言った。
「この本、最初買った時なんて書いてあったと思う?」
「え!?最初買った時…?うーん、なんだろう。買ってくれてありがとう!とかかな?」
私はこの本を買った時のことを思い出す。
「___白紙だったんだよ。」
何も書いていないノートのような本だった。
その本は書店の隅に一つだけあって、なぜか心惹かれたのだ。
炭治郎も興味深そうに火を止めてこちらに来た。そして私は手元にある本を開いた。
__日記とはまた違う、私の物語がそこには綴られている。
昨日全ページが埋まり、朝から読み返していた。
「この自分の物語読んでるとさ、びっくりしちゃうくらいに…
私の人生って3人でいるんだなって。」
私がこう言うと2人は目を見開いて、そしてニコッと笑った。
「私、自分が嫌いだったの。いつも守られてばかりで、自分は何もしてあげられないって。2人が言ってくれたよね、守ると決めるにはそれなりの理由があるって。最初はよくわからなかったの。」
「でも、私にも守りたいものができたから…ううん、守りたいものがあることに気づけたから、自分を許すことができたんだ。」
「___私の守りたいものって、この2人と共に歩んでく未来なんだ。」
私は彼らを鬱陶しいと思ったことが何度もある。でもその場で思っててもいざ文字に書いてみると全てそれすらも愛おしいと思う自分がいた。
「この本は、大切なことを教えてくれた。」
もうこの本はどこにも売っていない。書店を探したり、ネットで探したりしたけどピンとくるものはなかった。
だからね、これからは__
「___記憶に刻んでいこうと思うよ。」
私がそう言うと、善逸は私を抱きしめ、炭治郎は私の頭を撫でた。
この温もりや、この匂い、音。
全部全部、私の大事な物語の一部なんだよ。
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セシルン(プロフ) - この作品も好きなんですが極悪犯の方も好きでまた読みたくて気づいたらパスワード掛かっていたのでパスワード教えてほしいです!お願いします! (2021年7月22日 1時) (レス) id: 23bae16f03 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 豆大福さん» 皆様のおかげで無事完結することができました!ほのぼのとしていただけたのなら幸いです!そしてこちらこそ素晴らしいコメントありがとうございます!これからも頑張りますので何卒よろしくお願いいたします! (2020年3月21日 9時) (レス) id: 2ea5b93c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - ふぇりさん» ほのぼのとしていただけたのなら幸いです!!こちらこそ素晴らしいコメントありがとうございます!!!これからも頑張りますので、何卒よろしくお願い致します! (2020年3月21日 9時) (レス) id: 2ea5b93c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - なはやんさん» ありがとうございます!!無事完結できましたのも皆様の応援のおかげでございます!!こちらこそ素晴らしいコメントありがとうございます!!これからも頑張りますので、何卒よろしくお願い致します! (2020年3月21日 9時) (レス) id: 2ea5b93c28 (このIDを非表示/違反報告)
豆大福 - 完結おめでとうございます!見ていてほのぼのしていました!これからも応援してます! (2020年3月21日 8時) (レス) id: eb8684d377 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぬん | 作者ホームページ:http://urana
作成日時:2020年3月13日 0時