〈 広報 in 飛行機�� 〉 ページ10
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――「今何言いたいかわかる？」って。
そんなの、だって。
「わ、……わかんないです」
「へえ？」
「そういう察してムーブが許されるの女の子だけですよ」
ぼそぼそと早口で言葉を紡ぎ、顔を逸らして窓の外を見やる。
早朝4時。3月の空は未だに暗い。
山田さんが「そうか」と笑った。言葉もなく頷いて、私は。
「………わかんないです」
もう一度だけ、そう言って。
山田さんが何も言わなかったから、私も黙った。
何となく身体を動かせない。故に私は窓の外を見続け、数分後、我慢できずに隣へ視線をやった時には、もうそこに山田さんはいなかった。
「……ふー」
小さく、ため息にも似た何かが漏れる。
そこで気が付いた。今になって鼓動がはやくなっている。
だって声色がそっくりだったのだ。数時間前、冗談みたいなことを言った大谷さんと。だからこそ私は。
――「好き」って、言われるかと思った。
「ば、……ばかじゃないの……」
改めて考えるとアホらしくて、やけに頬が熱くなる。もう思考までおかしくなっているのだ。みんながみんな、私の調子を狂わせるようなことばかり言うから。
「………すき、とか、ありえないし」
自分に言い聞かせるように呟き、両頬をぱちんと叩く。
余計なことに割いているリソースはない。もう半日後にはアメリカにいるのだから、せめて今は眠って英気を養わなければ。
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「……あれ」
そう眠りについた、約半日後。
私たちを乗せた飛行機は、無事マイアミの空港に到着した。
現地と日本の時差は13時間。ここが今17日の午前3時だから、日本では大体午後4時だ。時間が巻き戻ったような感覚である。
「……あ、やっぱり。パ・リーグの広報さんですよね？」
「はい？」
そんなわけでトランプと睡眠を交互に繰り返したフライトを終え、キャリーと共に空港を歩いていると、報道陣の男性に声をかけられた。
テレビ局の腕章がついている。……アナウンサーかな。
「そうですけど……」
「ですよね！少しインタビューよろしいですか？」
「えっ、私？」
絶対に他に選ぶべき人がいると思うんだけど……。とはいえ断れないのがコミュ症である。
渋々マスクを外すと、アナウンサーさんはちょっと驚いた顔で私を見た。え何怖。
「……何か？」
「あ、いや、……えっと、そのお顔はご自分で？」
「はい？」
……一体何を言ってるんだ。悪口じゃないよね？
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
