〈 広報 in 飛行機�� 〉 ページ9
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……ぼ、ボロ負けした……。
機内が寝静まった中、私はそう遠い目で窓の外を眺めていた。
バチボコに3連敗したし、墓場まで持っていくつもりだった「宮城くんのタオルでジュース拭いたことある」なんて秘密まで吐き出させられて惨敗である。謝ったら許してくれるかな……。
「さっさと寝ろや」
と、後輩からの蔑む目を想像して怯えていると、隣に誰かが腰掛けた。山田さんだ。
「……今何時ですか？」
「4時」
「なんで山田さんは寝ないんですか」
「寝れんから」
周りの人を起こさぬための小さな声量が、何だか内緒話みたいでこそばゆい。……今起きてる人ってどのくらいいるんだろう。流石にみんな疲れちゃったかな。
「勝ててよかったな」
特に何を言うでもなく黙っていると、山田さんがふとそう呟く。
独り言かと思えば、彼の瞳ががっちりとこちらを見た。流石にそんなモノローグみたいな独り言言うわけないか。
「？……まあ、よかったですね」
「あ？何やそれ。不安そうにしとったやろ」
「断じてしてませんが？？」
「初日に弱音吐いたんは誰やねん」
嫌なところを突かれた。……や、それは確かに私だけど。
「別に心配してなかったですよ」
「はあ？」
「だって山田さんが勝つって言ったもん」
第一戦が迫ったあの日。雑にペットボトルを投げ、大丈夫だと笑った彼の顔を思い出す。
緊張こそすれど、弱気にならなかったのは山田さんがああ言ったからだ。何かやってくれるんだなと思ったし、事実彼は何かしてくれたわけで。
「すごいですよね。山田さんほんとに緊張しないんだもん」
「……」
「……山田さん？」
押し黙った彼が、ふいと私から目を逸らす。
寝るために裸眼になったせいでうまく顔が見えない。表情のひとつでも見られればよかったのだけれど。
「……別にそんなんやないけど」
「はい？」
「知らんやろ、お前。チェコ戦の日のこと」
呟き、山田さんは私を見た。
表情はわからないが、目が合っていることだけはわかる。やけに真面目な顔をしていることも。
「……あの日、不安だったからお前のこと探したし」
「……」
「お前おればちょっとはマシになるかと思ったのに、ブルペン引きこもっとるし」
彼の唇から、ふっと笑い声が漏れて。
「……なあ、今何言いたいかわかる？」
続く言葉を返せずにいると、山田さんは私の頭を雑に撫でた。
つい数時間前の大谷さんを思い出した。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
