〈 今日は誰の日？�� 〉 ページ3
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「ね、キャッチボールしよ」
「……絶対に嫌です」
彼の隣に駐在することが決まって早々、大谷さんはそんなことを言い始めた。
「えー、なんで？投げるだけじゃん」
「ノーコンだからです」
「別にいいよ。俺が全部捕るし」
「いやコントロールミスって大谷さんに当たったらどうするんですか……」
あと普通に加減されたとてメジャーMVPの球なんか取ったら手がもげる。そんな抗議を込めて彼を見やれば、大谷さんは鼻で笑った。うわあ殴りたい。
「当たんねえって。俺の反射神経ナメてる？」
「違いますよ。大谷さんを信頼する以上に自分のノーコンを信じてるだけです」
「それはそれでムカつくなあ」
……というか、あの人目がけて投げるなんてそんなの誰でも手が震えるだろうに。
そんな事情も露知らず、大谷さんはグラブを私に投げ付ける。反射的に受け止めれば「はい取ったー」と子供みたいな笑顔が返ってきて。
「ねえ……！本当に無理ですからね！」
「良いじゃん、別に」
「だからよくないって――」
「由伸とはしてたのに？」
なんて。
食い気味に発せられた言葉に、私は思わず唇を噛んだ。な、……何だそのずるい言い分は……！！
「由伸はよくて俺はダメなの？なんで？」
「……その手には乗りませんよ」
「俺より由伸のが好きってこと？」
「ぐっ……」
何をどうしたらそんな結論に至るんだと反論したくなったものの、大谷さんのニヤニヤした笑顔の前ではそんな気も失せてしまい。
仕方なくグラブを手にはめると、彼は上機嫌で「よし」と頷いた。……結局こうなるんだよなあ。
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「ははっ！ねえ、Aマジで下手すぎるんだけど！」
「だから言ったじゃないですか！スライダーとか教えてもらったところで投げられ――」
「うわっ危険球！」
「ウワーー！？！ねえやっぱやめましょうって！大谷さんが怪我する！」
「――由伸さん？」
試合前の練習中。
嫌でも目に入る約2名にうっかり思考を逸らしていると、宏斗が不思議そうな顔でこちらを見た。
「ん？」
「や、ボーッとしてたんで。……向こう気になります？」
そう指し示された先には、未だにじゃれ合うAと翔平くんの姿。
考えるよりも先に首を振り、俺は「いや？」と笑った。気にしていないと、自分にそう言い聞かせるように。
「別に。……あいつもどうせすぐこっち戻ってくるやろ」
なんて、希望的観測が妙に虚しかった。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
