〈 成長を望む20代の場合 〉 ページ13
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「Aさん何食いたいっすか？」
「マック」
「……その人聞くだけ無駄でしょ」
村上くんからの質問に素直に答えると、隣のろーたんが至極疲れたような表情でそう言った。1から100まで失礼だなこの子。
「マックって。せっかくアメリカ来てんだからぽいもの食いましょうよ」
「いや一番ぽいでしょ。ハンバーガー」
「そういうんじゃなくてさあ……」
尚も食い下がると、村上くんが呆れたようにろーたんの方を見る。見やるとろーたんも同じような顔をしていた。失礼な。
――マイアミのホテルに到着して、数時間が経過した。
自主参加の練習が行われるまで、私たちに与えられたのは自由である。ということで、私は誘われるがままに村上くんとろーたんとご飯を食べることにした。
……それにしたってマイアミ、暑すぎる。半袖でも汗ばむってどういうことなの。
「Aさんって肉食えます？」
そう照り付ける日差しを睨んでいると、村上くんと話していたろーたんがこちらを向いた。早速私抜きでご飯を決めることにしたらしい。
「どうだろ。……アメリカのって結構大きいよね？」
「まあ」
「食べきれなかったらろーたんが食べてくれる？」
「……まあ」
できれば断りたかったであろう間だった。こういう時男の子って頼りになるよね。
と、彼を見上げてふと思う。
そういえば、ろーたんとこうしてちゃんと話すのも久々だ。
そりゃ見かけたら一言二言声は掛けていたけれど、こうして向かい合うのはチェコ戦以来じゃなかろうか。
原因は言わずもがな気まずかったからだ。あの時、照れ混じりに呟いた褒め言葉への返答が、未だにどこかで燻っていて。
「……Aさん？」
――「 ……Aさんって、絶対俺に気ないのにそういうこと言うから困る 」
「あ、……うん。何？」
「こっちのセリフですけど。眠いんですか？」
「あー、いや……」
意味がわからないと一蹴したあれも、今となっては見え方が違う。
大谷さんにも、山田さんにだってあんなことを言われたのだ。
妙な引っ掛かりを覚えた彼の言葉に対しても、少し立ち止まって考えてしまうというもので。
「……ちょっと私も頑張らなきゃなって」
「ふ、何それ。いつも頑張ってないんですか？」
ろーたんが柔らかく笑って、僅かに目を細める。
その顔がやけに優しくて、彼はいつもこんな顔を私に向けていたのかと、そんなことを思った。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
