〈 成長しえない20代の場合 〉 ページ12
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「ねえ！すっごい！見てよ�盒兇�んプールある！！」
「うわすっげえ！Aさんのその落書きだらけの顔にはあんま触れない方がいい感じですか！？」
「うん！！ほらあっちにはものすごいでっかい絵画！！」
「なるほど！！すげーー！！」
「……移動明けやのにあの子ら元気やな」
ホテルに到着し、どうしてもはしゃがずにいられない私たちに、通りがかったダルビッシュさんがそう呟いた。すみません海外のデカいホテル泊まるの初めてなんです。
「すごいなあ……。これホテルの中全部探検できるかな」
「時間ありますかねえ。せっかくだからマイアミプチ旅行したいんですけど」
「ね。私本場のマック行きたい」
「日本と味変わんないですよ」
ド正論を言われてしまった。……�盒兇�んて結構冷静だよね。ピッチャーに向いてると思います。
「Aのそれ、まだ消えとらんの？」
なんて後輩の成長に一種の悲しさを感じていると、肩を掴まれ後ろを向かされた。
見やると、口角を緩めた山本が未だ落書きだらけの頬を撫でる。誰のせいだと思ってんだろうな。
「……おかげさまでね」
「あは、怒らんでもええやん。俺が書いたの自分の名前だけやし」
「書いたら同罪です〜〜」
しかもマイアミ暑いからマスク付けるのも面倒だし。……お風呂入ったら消えるかなあ。油性で書かれてたら訴えよっと。
「ね、A」
せめて、練習が始まるまでには何とかしないといけないのだけれど。
そう今後を憂いていると、山本が私の名を呼んだ。僅かに細めた目がホテル特有のきらきらした明かりを映し。
「……なに？」
「ちょっと休んだらさ、もう練習始まるやろ」
「うん」
「俺と一緒にいて」
すり、と山本の親指が頬を撫でた。……くすぐったい。
「……一緒にって、練習中に？」
「そー。先言っとかんとお前すぐどっか行くやろ」
「……べつに言われなくてもそのつもりだったよ」
素直に答えると、山本は少しだけ目を見開いた。
そりゃそうだ。未知の地で、それもよくわからん場所で一番信頼できる同期のそばを離れるわけがない。私のコミュ症を甘く見ないでほしい。
「むしろ山本の方でしょ。心細いんだから置いてかないでよ」
「……」
「返事ないと不安になるんだけど」
「………わ、かった」
小さく小さく呟いて、山本が目を逸らし。
未だその場にいた�盒兇�んが「わーお……」と私と山本を交互に見た。何だその反応は。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
