天城さんには靡かない【天城燐音】 (ページ9)

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８話ページ9

うんうんと唸りながら考えた末、私は軽くため息をついた。天城さんも引く気がないからこの話題を出したのだろう。なら私がどう言っても決意は変わらず、話し合いも終わらない。

『……分かりました。じゃあ、燐音さん、と呼ばせていただきます。』

「お！…でもその呼び方だと何か……」

『なんでしょう？』

「…いや、なんでも？んじゃあ改めてよろしくなァAちゃん♪」

『…はい。』

結果押しに負けて頷いた。先程とは打って変わってニコニコと笑っている天城さん…いや、燐音さんに少し首を傾げる。…まぁ、首を傾げても喜んでいる理由は分からなかったので、もう気にしないことにした。

「お待たせしたっす〜！前はパスタだったんで、今日はオムライスにしたっすよ！」

『ありがとうございます！』

「おっ、サンキュ。」

私と燐音さんの前に置かれたオムライスに思わず目を見開く。こんなに美味しそうなものだったのか、オムライス。今までそんなに食べて来なかったが、これからはいろんなものを食べてみるのもいいのかもしれない。

『いただきます。』
「…いただきます。」

私が手を合わせてそういうと、向かい合っていた燐音さんも綺麗な所作で手を合わせた。こういう場面を見ると、改めて燐音さんがもう大人であることを感じる。

『…あの、燐音さん。』

「ん？どーした？」

『…昨日、藍良くんに遊園地のチケットを貰ったんです。この前、その遊園地のPR企画があったので、それのお礼的なので貰ったのを、私にくれたんですけど。』

「おお？」

『だから、えっと…』

早口になる自分に焦りながら、昨日の夕方の出来事を思い出す。
実は昨日の帰り道、藍良くんに遊園地のチケットを貰い、それで燐音さんと遊んできたらどうか、と提案されたのだ。

目の前でキョトンとした顔をしたままの燐音さんをチラリと見て、少し俯いた。
せっかく話すようになったのだから、もっと仲良くなりたいな、とは思う。でも、燐音さんはアイドルで私は仮にではあるけれどプロデューサーである。一種の線引きは、必要不可欠だろう。

『…いえ、ごめんなさい。なんでもないです。忘れてください。』

「…待って、Aちゃんさァ……もしかして俺っちと一緒に、って言おうとしてた？」

『え………はい、一応。でも、やっぱり無理ですから。気にしないでください。』

「いや、俺っち行きたいんだけど。」

驚いた顔をした燐音さんの言葉に、私はもっと驚いた。