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そして帰る時は決まって彼はこう言う
「また数ヶ月会えないかも知んないけど、変わらず愛してるから」
頭にぽんと片手を置いて
帽子を深く被り直して部屋を出ていった
いつもなら『うん、分かった』って返してるはずなのに
今の自分には出来なくて、居なくなった彼を考え涙が溢れてきた
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『変わらず愛してる、か…』
楽しそうに笑い、歌うテレビの前の彼に呟いた
『私も…なんて言えないよ…』
静かな部屋、残酷な言葉と共にテレビのリモコンを押し、電源を切った
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案の定25日は連絡すらこなくて、期待しない方が良かった
26日、世間はクリスマスが終わり片付けに追われる日々
そんな中部屋のドアがガチャと空いた
「…やっぱ会いたくなった笑」
『…え、なんで…』
会えるはずもない彼が玄関に立っていて
複雑な気持ちに陥った
とりあえず中へ招き入れ、暖かい飲み物を出す
『なんで来たの?』
「…ダメだった?」
『ダメじゃないけど…仕事は?』
「急遽無くなったのが一個あって、早く終わった」
相槌を打って数秒後
いきなり抱きしめられてまたもや複雑な気持ちに
「ね、あのさ」
『…ん?どうした?』
「一緒に住まない?そしたら会いたい時に会えるし、こうやって抱きしめれる」
爆弾発言に数秒固まっていると
顔を覗き込まれた
「え?もしかして嫌だった?」
『…いや、そういうわけじゃないけど…ごめん、考えさせて』
一旦頭の中を整理させたくて立ち上がり台所ヘ立った
「…なんかごめん、でも言ってくんなきゃわかんない」
後ろを着いてきた彼がそう言うから
振り向いて私も言い返した
『…言ったらなにか変わる?』
「変わるかもしんないし、変わんないかもしんないじゃん」
『なんで今まで同棲してこなかったか、辰哉にわかるの?』
「いや、それは…」
『これからもっと辰哉は有名になるから、迷惑かけないようにって』
「別にそんなこと頼んでねぇじゃん」
喧嘩したい訳じゃない
ただ、話し合いたかっただけなのに
歯止めが効かなくなってきた気がする
『辰哉にとって、理想な彼女に、物分りのいい彼女に、なろう今まで頑張ってきた』
「…だから、それも頼んでないってば」
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作者名:チョコ | 作成日時:2022年9月18日 15時