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○五月雨○ ページ9

yb side.
〜社会人設定〜



ムンムンと照りつける太陽は大きな雲に覆われて、
今の俺に降り注ぐのは雨

今の季節は新緑を迎え、蝉たちがせっせと仕事の準備に追われているころだ


思ったよりも強く降り続ける雨はいっこうに止もうとする気配もなく、いつまで雨宿りしようか、「頼むから止んでくれ」と雲に訴えるけど、その声もむなしく…




__こういう時期の雨を五月雨っていうんだって、知ってた?




雨は止まない変わりに、俺に何かを与えたのだろうか。


突然となりから声が聞こえてきて、フと横を見れば
ちょっと新社会人にしては髪色明るめの男が1人



「えと…、俺に言ってる?」



何も思わず、ただ単に思ったことを率直に口にすると
その男は大きな目をもっと大きくして笑った。


「あなた以外いないでしょ、他に人もいないのに。
 独り言だったら俺、バカみたいじゃん」


俺はその笑顔に
雨がこのまま降り続ければいいのに…と、突然そう思った。




「今年から社会人なの?」


もっと話してみたいと思ったのは、いつぶりか分からないほど久しぶりで
次から次に話題が口から出ていく。


そのたびに光は「やぶってお話大好きなんだね。でも、俺やぶの話すき。ずっと聞いてたい」と言ってくれるから、余計に調子に乗ってしまう。


「違うよ、とっくのとうに社会人。やぶの話からすると、同じくらいの年齢だと思うよ?」
「うそ、俺28」
「ほら。俺27」


お互いに顔を見合わせ、面白くなったところでフッと吹き出す。


「フフ、なんだぁ〜。俺てっきり、やぶより上だと思ってた。
 見た目はカッコいいけど俺より年下っぽいなぁって…」


年下っぽいなぁって言うわりに、俺からしたら光の方が年下っぽい…
というか、実際そうなんだけど


「だからだよ?話しかけたの。年下だったら話しかけやすいなぁって。
 ……オレ、人見知りだから」


俺から話しかけて友達になったの、初めて。

そう言いながら、止みそうになった雨を見る光の横顔を見て
俺は自分の心情に気づいた。



でも、こんなこと簡単に言えないし今日知り合ったのなら尚更だ。


「__あ、止みそう…」


そんな中、弱くなった雨に手持ちの傘を指した光は、
「また会えたらいいね」と軽やかに行ってしまった。

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作者名:み。 | 作成日時:2022年2月28日 17時

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