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◇sideZ
A兄さんは、チョロ松兄さんに叩かれた手を数秒見つめていた。
その横顔は無表情で、思わず抱きついていた手を離す。
──兄さん、悲しくない……?
手を見つめて数秒、兄さんはへらりと笑った。
「お前ら、なんか今日機嫌悪い?」
ごめんな、気付けなくて。
やっぱ長男失格だな、本当にごめんな。
告げた兄さんは、相変わらず詠めない笑みを浮かべていた。
皆が俯く中、視界に捉えたのは兄さんに向かう赤。
おそ松兄さんがやろうとしていることが分かった時は、もう遅かった。
‥パァンッ!!!‥
そんな鈍い音が響く。
怯えて瞑っていた目を開くと、手を拳にして震えているおそ松兄さんと、その前で口から血を流しているA兄さん。
「お前さ、ホントクズだよね」
おそ松兄さんはきっと、拳のまま殴ったんだろう。
でも、平手打ちのような音がした。
それは、凄い速さで、凄い強さで殴らないと、鳴らない音だった。
酷くドスの効いたおそ松兄さんの低い声が、学生時代を思い出させた。
あぁ、そっか。
こんなおそ松兄さん、どこかで見たことあると思ったら。
弟を傷付けた不良をやっつける時の、おそ松兄さんだ。
「ちょ、大丈夫!?」
慌ててトッティが駆け寄る。
僕は未だに、その場から動けなかった。
もちろん、駆け寄ったトッティを無視しておそ松兄さんがA兄さんの胸ぐらを掴んだ時も。
「クズ、か。……知ってるよ
お前らが知ってる事は、大抵俺も知ってる」
「知らねぇだろ!!!だからこんなに俺が怒ってんの!!
お前がそこまで落ちぶれてたのは初耳だね!!
今まで何して生きてきたの!?
何年俺らの長男やってたの!?
何だよ今更、自分がクズだから長男やめます!?
ふざけてんのか?あ゙!?」
ガチギレだった。
こんなにキレてるおそ松兄さん見たことない、そう思わせる程に。
──でも、なんとなく分かった。
おそ松兄さんがこんな風に、本音さらけ出して、馬鹿みたいに声を荒げて、子供みたいに悪口捲し立てるのは、
……それは、A兄さんが大好きだから。
「落ち着けおそ松!!」
「カラ松兄さん、駄目だよ」
「は?十四松?」
「駄目、邪魔しないで。
おそ松兄さんとA兄さんの兄弟喧嘩、邪魔しないで」
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♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» あ、お分かりになられました??決して赤塚先生を悪者にしようってんじゃないです!!自分でもよく分かりません!!完結後にでも答え合わせしてくださいますと幸いです。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - ♂哀歌♀さん» うぅむ…そうか、そういう事か。この小説の赤塚先生も厄介な事してくれたねぇ…夢主がかわいそうだぜ。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» ありがとうございます!最後の最後で「あっ!」と思っていただけると幸いです(最後までまだ遠いですが(((そこまでお付き合いいただけますと幸いです! (2016年7月10日 21時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - なるほど、わからん°△° (2016年7月10日 2時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - 青やんさん» ありがとうございます!!私よりも夢主に近い御環境ですね……!頑張りますので今後ともよろしくお願いします! (2016年6月25日 12時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
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