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◇sideI
「え?ドコって…………え、おかえりは?」
キョトンと言った兄さんに、チョロ松がキレた。
「は!?何呑気なコト言ってんの!?
一日中ドコ行ってたんだよ、って聞いてんだけど!!」
「ハロワだよ?」
「…………え?………………は?」
「あれ、手紙置いて置かなかったっけ?
俺もう長男やめて自立する、って手紙を──」
訳の分からないまま話が進んでいく。
A兄さんの話は、途中十四松が抱き付いていって終わった。
“長男やめて自立する”
はたして、あの手紙はそんな簡単なものだったろうか。
「A兄さんおかえりーっっっ!!!!」
顔面を涙で覆いながら突進した十四松を、さすが長男と言うべきかぽすりと胸の中に納めてしまった。
転ぶどころかよろけもしないなんて、なんなんだろうあの長男。
「“長男やめる”って、そんな意味かよ……
心配しすぎてケツ毛燃えるわバカ!!!」
そう叫んだチョロ松兄さんを筆頭に、皆はどんどん八つ当たりとも思える罵倒を続けていく。
「そうだぞ兄貴!!どれだけ探し回ったと……」
「良かったよA兄さん!!」
「ねぇ兄さん!!やきう!!野球しよ!!」
けれど、あのクソ長男はなにも分かっちゃいなかった。
こっちの心配も、気持ちも。
「……さっきから兄貴兄貴って……
言っただろ、長男やめるんだよ、俺」
その言葉に、ピタリと空気が固まった。
「……どういうこと」
さっきまで傍観してた分、誰よりも早くそう問えた。
何故?なんで、分からない?
「俺長男やめるから、就職して家出ていく。
アレだろ、長男がクソニートだからお前らも親の脛かじってるんだろ?
だよな、そうだよな。兄貴の背中を追うもんな。
こんなクズ兄貴、きっとお前らには必要ないんだよ。
明日面接行ってくるから、合格したら借金して家借りて
松野家と別れて家族の縁切って
──1人で、生きていく」
ガツン、と、何か堅い物で頭を殴られた感じがした。
ギュッ、と、紐のような物で心臓を絞められた感じがした。
いつもそうだった。
兄貴は俺らの鏡で、誇りで。
六つ子全員、兄貴の背中を追っていた。
……でも、兄貴が居ようが居まいが、きっとニートになっていた。
そう言ったら、兄貴は留まってくれるだろうか?
──否。
「なんでいつもそうやって、勝手に決めんだよ……!!」
兄貴は、言ったことは、変えなかった。
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♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» あ、お分かりになられました??決して赤塚先生を悪者にしようってんじゃないです!!自分でもよく分かりません!!完結後にでも答え合わせしてくださいますと幸いです。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - ♂哀歌♀さん» うぅむ…そうか、そういう事か。この小説の赤塚先生も厄介な事してくれたねぇ…夢主がかわいそうだぜ。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» ありがとうございます!最後の最後で「あっ!」と思っていただけると幸いです(最後までまだ遠いですが(((そこまでお付き合いいただけますと幸いです! (2016年7月10日 21時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - なるほど、わからん°△° (2016年7月10日 2時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - 青やんさん» ありがとうございます!!私よりも夢主に近い御環境ですね……!頑張りますので今後ともよろしくお願いします! (2016年6月25日 12時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
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