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◇sideI
タンタン、と心地いい揺れ。
開いた視界に移る黒髪に、あぁ今背おわれてんのか、と理解する。
母さんがいつも日光干ししてくれる布団と長男が屋根の上で吸収する太陽の匂いがした。
端的に言えば、
俺ら六つ子という“月”あるいは“地球”を照らす太陽。
未だ膨張を続けるそれは、俺たちに不安を与えつけるんだ。
ふと周りを見渡せば、家のすぐ近く。
チョロ松はおそ松兄さんの背中で、
トド松は十四松の背中で寝てるのが見えた。
「カラ松、お前呑んでないの?」
寝ていたはずの俺が声をかけたからか、
珍しく俺が名前で呼んだからか、
ソイツはびくりと肩を揺らした。
「いや、呑んだぞ?」
「……あっそ。兄さん降ろして」
もう大丈夫、と言いながらその背中から離れようとすれば、きゅ、と俺を支える手に力が込められた気がした。
気がした、というのは思い込みの可能性もあるから。
直後長男はすんなりと俺を地に降ろしたから、そう思った。
でも、もしかしたら。
もしかしたら、長男は────
「ねぇ」
俺の声に、ふと長男は足を止めて振り返った。
つられて他の兄弟たちも止まる。
──考えなきゃ。
どうにかその“可能性”の左右を見極める方法を。
ここで最も“良い”質問の内容を。
思考回路が、ブレーキが、ゆるりと弱まった今、一番妥当である質問を。
「なんで、今更出てくの」
それが最善であるのか、それは分からない。
《未来》なんて、俺には分からない。
「今が【潮時】だからだよ。
抗っちゃいけない“難問”が目の前に現れたんだ」
「じゃあ何、兄さんはその【潮時】が来なきゃ長男やめるつもり無かったの」
「……【潮時】が来るのは産まれた時から分かってた
元々『いつかは長男をやめる』っていう了解のもと俺は生きてきたから、
やめるつもり無かったかと聞かれれば答えられない」
「そんな事実、受け入れられたの」
「うん。初めは絶望したよ。その運命を呪った。
運命を作った赤塚先生に殺意を抱いた。
でもさ、分かっちゃったんだよね、俺」
赤塚先生。
長男は何度もそう言った。
「『あぁ、確かに俺はこのモノガタリに必要ない』」
それが、全てを示す“ヒント”だということに、
俺も兄弟も気づかない。
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♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» あ、お分かりになられました??決して赤塚先生を悪者にしようってんじゃないです!!自分でもよく分かりません!!完結後にでも答え合わせしてくださいますと幸いです。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - ♂哀歌♀さん» うぅむ…そうか、そういう事か。この小説の赤塚先生も厄介な事してくれたねぇ…夢主がかわいそうだぜ。 (2016年8月7日 0時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - シニタイさん» ありがとうございます!最後の最後で「あっ!」と思っていただけると幸いです(最後までまだ遠いですが(((そこまでお付き合いいただけますと幸いです! (2016年7月10日 21時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
シニタイ - なるほど、わからん°△° (2016年7月10日 2時) (レス) id: c4a2582adf (このIDを非表示/違反報告)
♂哀歌♀(プロフ) - 青やんさん» ありがとうございます!!私よりも夢主に近い御環境ですね……!頑張りますので今後ともよろしくお願いします! (2016年6月25日 12時) (レス) id: 2229a4fcd3 (このIDを非表示/違反報告)
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