一歩進んで半歩戻る僕ら

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前略、お父さんお母さん。
私、アイドルに恋愛相談を受けました。


相手はなんと私だそうです。


曰く、私が好きだけど女性が苦手という気持ちもあるからどうしていいか分からないと。


そして分からないからとりあえず私に意見を聞こうかと。



…いや、私が1番分からないからなこの状況？？？



場所、アイドル事務所の適当な廊下のフロア。
偶然すれ違った場所とも言える。


相手、男性アイドルグループSEVENTEENのジュンさん。中国からはるばるやってきた人。大層顔が良い。


私が混乱の果てにイマジナリー両親に現状を語りかけている間も彼は目線を伏し目にしてモジモジと手をすり合わせで照れている。


いや口を閉ざさないでほしい決定権を委ねないでほしい。
子犬みたいな瞳で見ないで欲しい。


情報、そうまずはお互いの情報整理からだ。



『…あの、非常に申し訳ないんですけれど、私と貴方は事務所のスタッフとアイドル。で、私は書類作成をしてる事務員だからオフィスでも接点は少なかった、ですよね？いや、長い間貴方のグループの担当ですけど』


アイドル事務所プレディスエンターテインメントの事務スタッフとして早数年。私は彼らSEVENTEENのデビュー前から彼らの書類仕事を続けていた。


私は基本事務仕事フロアの固定住人。
朝出勤してパソコンと睨み合って書類作成、上司や他の部署のスタッフ達と打ち合わせや会議に出席してまた書類作成。アイドルやスタッフ、外部レーベルとの契約。
当社アイドルの仕事の為の仕事。
とにかく総務的な座り仕事。

夕方には退勤、時々残業。
カムバ前とライブ前は戦場と化す。

嫌だと思えば続けてなんていない。
私の仕事はファンの目に見える事は無いけれど、欠かせない仕事だから。


とまあ、別にアイドル事務所で働いているからと言ってアイドルに会いたい訳でも日々会える訳でもない。

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