生きたい彼女と死にたい彼。 (ページ33)

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選択ページ33

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7月下旬。

「Aさんすみません、
もう少し精密な検査させて下さい」

夏休み開始直後、

定期検査へ病院に行くと

血相を変えた先生がカルテを見つめながらそう言った。

今日は父に付き添われて来たから

少しばかり心強かったものの、

その一言にふたりで目を見合わせた。

あの日から症状は安定していて、寧ろ調子がいい。

阿部くんを前にするとどうしても動揺するけど…

久々に薬も飲まずに過ごせている。

もしかしたら嵐の前の静けさで、

今日の検査結果によっては

もう家に帰れないんじゃ無いかと不安になる。

このまま結局何でもありませんでした、長生きできます。

とでも言ってくれればいいのに。

検査のためにベットに寝転がりながらそうぼんやり考えていたら、

イツメンとスーツを着てあの桜の木の下に立っていた。

もう大人だねって会話をして、

お互い頑張ろうねって励ましあった。

また来年もここに来ようねって私が問いかける。

でも3人は

「ごめん、うちらもうここには来ない。
Aとも会わない。じゃあね」

そう淡白に言い残して去っていく。

必死に追いかけようとするのに、

脚は重くて動かなくて、

風に乗って舞う桜の花びらたちに

3人の背中を見る事さえも阻まれる。

イツメンとしてもう一生集まれないなんて、そんなの…

その場で立ち尽くしていると、

途端に苦しくなって胸元をぎゅっと握りしめてしゃがみこんだ。

誰も、誰も助けてくれない。何も……

「A！！」

『っ！…はあっ、はっ、夢……』

「魘されてたけど、平気か？
…検査終わったけど先生から話聞かなきゃなんだ。起きれる、？」

検査については父が説明を聞いてくれた上で承諾したらしく、私は何も分からないままいつの間にか寝てしまっていたらしい。

夢にしてはリアルだった、な。

夢を見てから考えるようになった。

イツメンの3人と、イツメンとしていられないのであれば

クラスでの生活は楽しくないし

夏休みも充実しない。

あくまでも阿部くん達ふたりは秘密交換した"だけ"の友人。

そんな関係でもふたりとずっと入れる確証はないし、

夢のように3人にもう会わないと切り捨てられない確証もない。

あれ……私なんで生きたいの？