生きたい彼女と死にたい彼。 (ページ31)

今日:12 hit、昨日:14 hit、合計:53,751 hit

- ページ31

-

ブーと言うスマホのバイブ音で我に帰る。

閉じた小説の下になっていた伏せたままのスマホの画面を付けると、

目の前に座っている阿部くんからだった。

"ちょっと気になる事があるから協力してほしいんだけど、いいかな"

なぜ目の前にいるのにメッセージなのか疑問だったがここ

は空気を読んで、私もメッセージで返答。

"いいよ？"

"ありがとう"

『何でメッセージ？』

「なんか、直接言うのが憚られた」

直接同意を得るのが憚られるとは一体……？

最近阿部くんに対して疑問点ばかり上がる。

阿部くんは少し部屋を見渡して、

ベットに座っていいか聞いてきたから快く了承した。

すると、とんとん、っと自分の横に座れと言わんばかりの

顔でこちらを見てきた。

またまた疑問に思いながらも次は渋々隣に座った。

「Aちゃん…って呼んだら違和感、？」

突然の名前呼びに動揺しつつも全然。と返事をした。

佐久間くんだってあだ名呼びだし……。

ふたりは距離の縮め方が異様に早い。

「Aちゃんはさ、もしね？…好きな人がいて、
その人とこんな感じでふたりで座ってて…」

ちょっとごめんね？と言って肩を持たれながら

ベットの上に押し倒され、両手首を纏め上げられた。

あまりにも優しい力で少しどきッとした。

「こういう状況になったら、嬉しい？…と言うか、
良い意味でどきどきする？」

『えっ…と、そりゃあ…する、かな…？』

「じゃあさ……」

そう言って不意に近づいてくる阿部くんの綺麗な顔。

こんなに近くで見たのは初めて。

思わず目を瞑ると流れるように唇が重なる。

離れていく瞬間まで、

何が起きたかうまく理解できずに放心状態へと陥っていた。