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「こんな時間に何してるんですか」
オーバーサイズの長袖シャツに
スキニーの上下暗めのコーデをした昨日のあいつが立っていた。
片手にはアイスコーヒー。
まさかの2日連続邪魔が入る。
『えっ！？……いや、そっちこそ…』
「ズルじゃないですよ、俺はね」
『私だってズルじゃないですもん』
昨日もう会わなくて済むだろうと勝手に憶測を立ててこの場を去ったことを今更ながらほんの少し後悔している。
正直仲の良い子に見つかるよりも一段と気まずい。
『…何休みですか』
「別に教えてもいいですけど、貴方が昨日俺の提案にそっぽ向いたから無理ですね」
そう言いながら日陰の方に歩いていくそいつに、
さり気なく付いていく。
『だって名前も知らないはじめましての人に、
秘密なんて話せるわけないじゃないですか』
呑気にアイスコーヒーを吸い上げる。
まるで話を聞いている様子には見えなかったが、
少し間を置いてからそういえば名前言ってないのかと、
独り言をボソボソと。
「阿部です、よろしく」
『あ… Aです…』
突然の自己紹介に慌てて返答する。
「で、どうする？共有する？」
秘密秘密って、飽きないやつ…。
しかもサラッとタメ口だし。
一応同級生だからいいんだけど。
でも今いっその事、こいつに話してしまえば
友人達に話すとき少し気が楽なのかな、
なんて考えてしまうくらいに心が脆い。
飴細工のように、下手に扱われたら壊れる。
『口外しないって…誓ってくれるのであれば』
「いや、秘密交換なんだからあたりまえじゃん」
何も考えずにすみませんと言うと、
敬語使わないでと手をぱっぱっと払いながら言われた。
こちらが話す間も与えずに俺のはね、
と話し始めてしまった。
いま頭が回らないから許可してしまったけど、
こいつの…阿部くんの秘密が根っからの甘党だとか、
マザコンだとか、今日休んだのはズルでしたとか、
秘密にする程でもない事を発表されたらどうするのか一切考えていなかった。
こっちは至って真面目に答えようとしてしまっている事自体
少しおかしいのかもしれない。
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作者名：chirua | 作成日時：2022年8月7日 17時
