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『あの、選ばれた子…って?』
「実は俺と舘さんも、阿部ちゃんとそんな感じで会ってさ。
めっちゃしょーもないんだけど、
そう言う友達とか知り合いしか作ってないみたいでさ?
だから女の子って余計珍しいなーって」
『…私のほぼナンパでしたけどね』
今考えれば
今日は1人なんですねなんて
声掛けするの、高校生ではなかなかやらない。
でもそれを聞いた深澤さんが椅子にもたれ掛かりながら
「阿部ちゃんがナンパ!?」
と、まあまあの声量で暴露。
『いや声……』
と言ったときにはとき既に遅し。
深澤さんの声にしんと静まった。
「お前やっぱりデート未遂じゃねえだろ!!」
「阿部の意外な一面か?」
「いやちげ、ふっかそれなんの話!?」
「いやAちゃんが阿部ちゃんにナンパされたって」
『それは比喩的な表現です!!声大きいです!!』
「佐久間、デート未遂っての気になるぞ」
『ぁあもう!!宮舘さんも話し広げないでください!!』
あわあわする阿部くん横目に
ゲラゲラ笑ってる佐久間くんと深澤さん。
私の言葉にナイスツッコミと言いながら調理し始める宮舘さん。
それを見て思わずつられて笑ってしまう。
こう言う小さな事が幸せなんだと、
イツメンと離れて初めて気がついた。
私は短命だけど自由を選んだ。
入院して待って、
結局ドナーが見つからず静かに死にましたなんて
絶対に嫌だった。
病気と分かったときは
生きたくて生きたくて仕方がなかったのに、
今となってはよくわからない。
阿部くんみたいに死にたいわけでは決してないけど。
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作者名:chirua | 作成日時:2022年8月7日 17時