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『誰か待ってるの?』
「佐久間が二者面談だから待ってる。
ほら、あの煩いやつ」
一緒にいる阿部くんですら煩いやつって言っちゃうんだ。
そうなんだ。と相づちを打ってさり気なく帰ろうとすると、
「あ、1週間経ったけど、話せた?」と。
勢い良く振り返ってフリーズした。
私の考え方が見透かされている気分。
俯き加減で首を横に振る。
話そうとはしているけど、
やっぱり楽しい雰囲気をぶち破ることは私にはできなくて、
呼吸が苦しくなった時でさえ笑って誤魔化した。
「もし良かったらだけど、一緒に帰らない?うるさいのいるけど」
『...私は全然良いけど、佐久間くんは』
「佐久間は大丈夫。行きつけ教えてあげるよ」
さっきの場所まで逆戻りして阿部くんが立ってる向かいに少しだけ距離を置いて立った。
が、キョロキョロと周りを見てから私の隣に立って
「こんな携帯ない時代の待ち合わせみたいなの
辞めたいから電話番号教えて?」
色々疑問があったのに、こてっと首を傾げる彼を見て二つ返事で電話番号を教えた。
理由を聞いたら、
下手にLINE交換してるより、
SMSでやりとりしたほうが秘密を交換した友人関係ぽいから。
と。
連絡先を交換し終えると、
姿が見えない内から阿部ちゃーん!
と大声で階段を駆け下りて来る佐久間くんの声が聞こえてきた。
「ごめん!先生と今季のアニメの話でもり…あがっ、て…」
佐久間くんの元気活発な声が段々小さくなった。
きっと大好きな親友の隣に女を再び見つけたからだろう。
「佐久間、今日は三人で帰るでもいい?」
「いい、けど、阿部ちゃん最近女友達増えたね、?」
「違うって、この子がAちゃんだよ」
どこかのタイミングで私の事を紹介してくれていたのか
佐久間くんにそう伝えた。
あー…と佐久間くんが必死に記憶をたぐり寄せながら
階段の最後の一段を降りる。
「……あ!!!デート未遂の子!!!」
『えっ、デ、?未遂?』
「そうそう。はい、行こー」
ツッコミどころ満載なやり取りを慣れたように受け流す阿部くんの後ろを、待ってー!と追いかける佐久間くん。
その後ろを早足でついていった。
最弱のRPG感。
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作者名:chirua | 作成日時:2022年8月7日 17時