無色の子 【呪術廻戦】弐

肆拾玖 ページ10

蒼と赫が交差する。


「…何もしてないよ。

ホントに何も。」


Aは顔を歪めて答える。


「5歳まで何処に居た？」

「…暗いところ。

暗くて、寒くて汚いの。」


「兄弟とか知らねえのか？」


「…知らない。」


一向に有力な情報を話さないAにしびれを切らした五条は口を開いた。


「…何か他に知らねえのか？」


「ずっとボロ小屋にいたの。

雨漏りもひどかった。

でも…」


Aは何かを思い出したようだ。


「どうした？」


腕を抱え少しAは小さくなって話す。


「その前は違うところにいた気がするの。

それで…誰かを見たの。」


「誰だ？」


今にも泣きそうな声でAはぽつりと話す。


「見られたのかな…。

分からないけど多分その後、足枷付けられたんだ。」


目を瞑り少し震えながら話す。

まるで何かに耐えているように。


「…それで、その小屋からどうやって抜け出した？」

「その小屋に来た男に助けられたの。

血の匂いがして臭かった。」


そう話すAの震えは小さくなっていった。

「血の匂い？」

「うん。

血の匂いがした。

それで…足枷を壊してくれた。」


Aの表情は少し穏やかになる。


「どんな感じに？」


「鎖を踏んづけて…バキッと。

その後何か撒いてたけど、油だったのかなあ。」

「それでその後は？」


「その人に育ててもらったの。

全色盲だって判ったのも拾われてからだった。」


「全色盲か…。」


五条はAが全色盲だという事に驚く。

なんせそんな素振りを見せないのだ。


「うん。

その人が言うには天与呪縛だって。」

「何で判った？」

「その人も天与呪縛で呪力がなかった。

私は呪力が多いの。

どのくらいかはわからないけど。

それで多分天与呪縛だろうって。」

「…なるほど。

なあ、A。

俺には双子の妹がいるはずなんだよ。」

「そう、なんだ。」

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