85. 不意打ちの ページ5
とりあえずなんか言わないとだよね、
A「あ、と、友達としてってことですよねもちろん！」
CY「そ、そうなのかな…ううん…」
A「そうですよそうですよもちろんオフコース！
あの、じゃあ、ハンカチそろそろ返してください！」
お互いに混乱して何言ってるのかわからない。
びっくりしたぁ…。なんか本人もよくわかってないみたいだし、やっぱ友達としてだよね。
出会ってからちょっとしか経ってないし、まだほとんど関わってきてないし。
CY「う…うん…はい」
向こうも錯乱してるのか思ったよりあっさり返してくれた。
A「ででででは、あの、もう帰らせ…」
それは一瞬の出来事。
抵抗する隙も与えないほどの不意打ち。
唇が重なっていることを脳が理解したのは、少し経ってからだった。
A「…っん！」
突き放す前に、向こうがバッと離れる。
CY「お…俺、なにを…」
何かを考えることもできず、ちょうど停止したバスを飛び出した。
CY「まっ…！Aどこ行く」
プシュー、という音と共に、声は途切れる。どうやら降りるのに間に合わずそのまま乗せられていったみたい。
だから、そのあと彼がどんな切ない表情をしていたかなんて、私には知る由もなかったんだ。
…
そのあとは、気づいたら自分の家にいた。どうやって帰ったのかもほとんど覚えていない。
何、された…？？
自分の唇に触れてみても、なんだか実感わかない。
まるで夢の中のできごとのようで。
久しぶりに手元に戻ってきたハンカチだけが、あの日のことが実際に起こったことだと、証明してくれているのであった。
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作者名：ミミ | 作成日時：2014年8月9日 11時
