episode 1 ページ2
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「Aちゃぁん、好きな人ほんとにいないのぉ?」
完璧に酔いが回ったターゲットがあたしに横からもたれかかってくる。
「まっさかぁ、いませんよそんな人」
肩にもたれかかって来たかと思えば、意識を飛ばしたかのようにあたしに崩れかかってきた。
手が胸に当たりそうになることをうまく避ける。
触らせるものか。ばかめ。
大人の時間である夜に、薄暗い路地に入っていく。
ようやく酒に盛ってやった痺れ毒が完全に回ったのだろう、ターゲットはピク、ピクと体を痙攣させたまま、あたしに もつれて動かなくなった。
あとはこいつの首元にチョップをくれてやり、アジトで拷問すればあたしの仕事は終わりだ。
「あらぁら、ちょっと盛りすぎたかも」
短く溜息をつき、そいつの首元に手を添える。
__この人、しかもこの時期に外套着てるとか変わってるなぁ、
_包帯巻いてるし、んぁー、コスプレイヤーなの?
心の声が漏れかかる。
__にしてもあーチョロい。
人の命とはなんと脆いものなのか。
手刀は簡単に意識を飛ばせる他、角度と力の加減によってはそのまま殺すことも可能な訳で。
ターゲットに関する私情は欠片もない。
元から殺すためだけに近づいた男だ。
「__、太宰、治ねぇ。」
___何がマフィア最年少幹部よ、チョロいじゃない。
「ちょっとじっとしててね〜、」
あたしはそう言いながら路地裏の奥へ奥へとターゲットを引きずり込む。
壁に体を押し当て、彼に顔を近づける。
長いまつ毛が目と鼻の先に。
あと数センチで唇が重なる瞬間に。
息を潜めて、まるで深い深いキスをするかのような甘い香りを漂わせたら。
鋭くーー、そのまま手を_
彼の首元に近づけた時。
「______ッ!?」
「おはよ、Aちゃん」
動けないはずである彼が____、
合うはずのない彼の瞳が。
「そのまま甘いAちゃんが欲しいのだけど?」
あたしの瞳をしっかりと見つめていた。
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紅蒼(プロフ) - 面白いです!更新を気長に待っています! (2018年9月8日 23時) (レス) id: f70065e07d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あや抹茶 | 作成日時:2018年8月4日 23時