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「ただいま」
それから少し談笑を重ねたあと、時計の長いハリが下を向いた頃に玄関から音が聞こえた。
Aが少しだけ目を開かせ、ゆっくりと立ち上がってパタパタと音を鳴らしながら玄関へと向かって行った。
こういう時いつもエレンは少し遅く行くのだ、ジャンは苦笑い気味に肩を竦め、2人がこちらへ来るのを待った。
「父さん母さんのこと大好きだからよぉ〜…」
「ほぉ〜、んで、ガキのお前が気使ってるわけか」
「ガキじゃねぇけどそう！俺がいても見境なしだから！ちなみに俺にも！そろそろ恥ずかしいよな…」
「いいじゃねぇか、こんな仲良い夫婦滅多にいねぇよ」
エレンの心底嫌そうな顔に、そうかこいつ今反抗期か？とジャンはくすくす笑ってしまった。
確かにAとライナーは二千年前からラブラブだったし、なによりずっと仲のいい夫婦として知られていた。
そしてそれはライナーがこの世を去る頃まで続いたからだ
Aよりも一足先にこの世を去ったライナー、Aもその後を追うように半年後息を引き取ったのである。
だがまさか二千年越しでまた見せられるとは、とジャンも心底呆れてしまう。
それと同時に少しだけ微笑ましくもあったのだ。
「…そうかも」
「お、少しは分かるんだな」
「最近どこの家も離婚離婚って騒いでて…」
「…あぁ…そりゃ…」
随分ませた小学生だな。とジャンは苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。
エレンはそんなジャンに首を傾げ、しかしすぐ追求をするのはやめて顔を伏せた
「俺、母さんと父さんが離れ離れだなんて耐えられねぇよ…」
「あら？嬉しいことを言うのね」
「ジャン、久しぶりだな」
やっとこさドアが開き、Aとライナーが姿を現した。
エレンが待ってましたというようにライナーに飛びつき、Aはいつもと変わらぬ表情でジャンの正面のソファに座り直した。
「あなた、先に着替えてきちゃって」
「あぁ、…ほらエレン、少し待ってろ」
母さんに怒られちまうぞ、と言いつつ1度だけエレンを抱き上げてくるりと回り、ライナーはゆっくりとエレンを床に下ろしてその黒い髪の毛を撫でた。
エレンは大人しく頷き、先程腰かけていた簡易イスにギシッ、と音を鳴らしながら腰かけた。
「…随分とエレンに甘いな…お前ら…」
「ほら、やっぱり第一子って可愛がりがちでしょ…？」
「母さんはジークにも甘々だけどな」
「こらエレン、それはいいのよ」
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作者名：ふりこ | 作成日時：2022年3月3日 14時
