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結局、俺の体が回復してから島のことを尋問しに来たのはAだった。
ただその時のAはしっかりと司令官らしい目をしていて、こと細かく島のことを聞かれた。
俺も嘘をつく気は無いので、この三年を嘘偽りなく全て伝えた。
するとAは何故か身体をかため、眉を下げながら俺を見つめていた。
「…俺は今、何か言ったか？」
「……ううん、ライナーにとってはそう見えたのね。…あなたの心が死んでいなくてよかった」
「……A？」
「ううん、なんでもないよ。それで、報告は終わり？」
「あぁ、ほとんどは…あとは……」
俺自身の人格が別れたことは言わなかった。言わなくても、Aなら気づいてしまいそうではあるがあえて伝えなかった。
もし気づかれているのであればそのままだし、逆に気づいていないのにそんなことを伝えたらまたAに気苦労をかけてしまうことになるだろう。
「…色んな奴がいたよ、壁の中には」
「…ライナーは、楽しかった？」
「！…ふは、あぁ。そうかもしれないな、楽しかった、のかもしれない」
仲間ができたと本気で思っていたんだ。じゃなきゃ3年もあの場所にもぐり込めるわけが無いのだから。
Aは俺のその言葉を聞くと優しい顔で微笑み、よかった。と呟いた。
これがもしA以外の上官の前なら俺は即処刑、つまり鎧の継承権を譲らなくてはならなくなるということだ。
でもAなら、俺の話をしっかりと聞いてくれる気がした。
その証拠に、先程まで持っていた報告書をAは既に机の上に置いて放置している。俺との会話を報告するつもりはサラサラ無いのだ。
「よし、これで事情聴取は終わり！あとはジークさん達から聞くから、ライナーは休んでいいからね」
「あぁ…A、お前は変わったな。」
「…ライナーを置いて大人になった、それだけだよ」
ライナーが大人じゃないとは言わないけどね、とAは苦笑いするとそのまま部屋を出ていってしまった。
俺が最後に見たAは、壁内へ向かう俺たちを寂しそうに、目をうるうるさせながら見つめていた泣き虫だったはずなのに。
随分と強い顔をするようになった、瞳に涙の膜が張ることが無くなった。そして大人を見つめる瞳が、黒く染っていた。
確実に俺の幼なじみは変わってしまったのだ。
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終わり
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作者名：ふりこ | 作成日時：2022年3月3日 14時
