if3 ページ35
死んだのが✗✗✗だったら
·
「＿＿＿！A…、A！！」
「ッは…！！っごめん、助かった…！」
「お前…いや、後でいい。とにかく今は集中しろよ、正念場だぞ」
Aはあそこまで伸ばしていた髪の毛をバッサリと短すぎるほどに切り落としていた。ポルコが褒めた日から、手入れを欠かすことのなかったあの長い髪の毛を。異変は現れていたとポルコは思う。
あれほど泣き虫だったのに泣くことも無くなり、弱音を吐くことも無くなった。
マーレの上官に楯突くことも無く、大人しくなってしまった。
そうして何より、戦闘中にも普段の生活でも、ぼーっとしていることが増えた。
「…お前、どう思う」
「…まぁ、仕方ないよ。…Aには整理する時間が必要なんだから」
ピークがどこか悲しそうに目を細めさせて言うのをポルコはどこか他人事のようにぼうっと眺めていた。
自分から問いかけた時こういう顔をすると、ポルコが聞いたんでしょ？と頬をふくらませて怒っていたあの少女はもう居ない。
「死にたいの？」
「…どう、なんでしょうね」
「お前が死んだらみんなも哀しむよ、…あいつもそうだろ」
随分濁った目をするようになった。ジークは煙草の煙を吐き出しながら目の前で死にそうな顔をしているAを見つめた。
戦場で死に急ぐことが増え、ふらりとどこかに消えてしまいそう。
程よい肉付きだったはずの身体は段々と痩せ細り、ジークが握れば折れてしまいそうな程だった。
抵抗しなくなったAをいいことに人体実験が過激化しているのも、ジークは知っていた。
「意味を感じないんです、この世界に。」
「……」
「守りたかった人は、次々と零れ落ちて行く。」
Aが自身の細くなった手のひらをみつめて、はぁ。と白い息を吐き出した。
もう冬だと言うのに防寒着のひとつも着ていないこの女は、一体幾つのものを失ったのか。
「ねぇ、ジークさん」
「…なんだ？」
「もし来世があるなら、みんなを守れるかな」
その言葉にはっとして、ジークはAを改めて真正面から見つめた。
その目はもうこちらを見てはいなかった、Aの濁った瞳は、先日の始祖奪還で命を落とした最愛だけを見つめていた。
「俺を恨むか、A」
「…いえ、そんな事ないです。…そもそも彼らを送り出すと決めたのは私なんですから」
Aは目を細めさせて苦笑いをうかべ、もう話すことは無いと言いたげに踵を返した。
その姿を止めることは終ぞ叶わぬ事だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 173人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふりこ | 作成日時：2022年3月3日 14時
