距離感の話をするだけ ページ29
マーレの時
·
「……なぁ、あいつらさ」
「ん？」
「付き合ってんのか？付き合ってねぇのか？」
「付き合ってないんじゃない？付き合ったらもう少し浮かれるよきっと」
ピークがで店で買ったパンを食べながらそう呟いた。ポルコは嫌そうに眉をしかめながら目の前の男女を見つめている
そこにいるのはゼロ距離で腕同士をピタリとくっつけ、ひとつのパンを二人で食べているライナーとAだった。
Aが買いたいと言ったパンを、美味しいからとライナーにいわゆる「あーん」で食べさせているわけである。
「美味しい？」
「あぁ、お前の選ぶ料理にハズレはないだろう」
「なら良かった！これひとつは食べきれないから半分こしよ！」
「そう言うと思った」
仕方なさそうに苦笑いをするライナーの瞳は慈悲に満ち溢れているし、ライナーを見上げて笑うAはキラキラと輝いている。あそこだけ作画が違うのである。
「あ、A」
「ん？」
「パンくずが…ほら、とれた」
まぁ正直そこまでならばピークやポルコ、なんならジークだってやる。しかしこの二人はここからが違うのだ。
なんとライナーは手に取ったパンくずをそのまま口に運んでしまった。Aはそれを見て驚いた様子もなく「ありがとう」とだけ言ってパンを食べ始めている。
「…」
「ポルコ顔、歪んでるよ」
「いや…そういえばこの前も朝に挨拶のキスしてたな…ガキかあいつら……」
「え？まだそれやってるの？2人とも20歳だよね？」
流石のピークも驚いた顔をして、ようやっとパンを食べ終えたらしい2人を見つめていた。
すると視線に気づいたのか、Aがピーク達に振替って小首を傾げる。
「なぁに？」
「いや…君らは本当に仲良しだよね、って。」
「え？ライナーと？」
「そうだよ、ライナーが帰ってきてからずっと一緒だろう？」
ピークがそう言うと、Aとライナーは顔を見合せ、そのまま首を傾げた。はて、なんの事やら。とでも言いたげである。
「昔からこうでしょ？」
「お前が転けて泣いてる時も運んでやったしな」
「ねぇライナー、それ今言わなくていいよね？」
「悪い悪い、つい口が滑って」
ムキーッ！と怒り出したAはライナーの腕の中からするりと抜けて先を歩き出してしまう。
するとライナーの目が僅かに見開かれ、Aの背中を追うように歩き出した。
「……いや、あれはなんていうか…。」
「迷子の子犬みたいじゃねぇか、ドベの野郎…。」
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作者名：ふりこ | 作成日時：2022年3月3日 14時
