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壁内 ページ12
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「あ、あのっ、私、ライナーのこと好きなの…」
「……ありがとう、だが悪い。故郷に残してきた女が居るんだ。…そいつを忘れられない」
「ッ……そっか、そうだよね。ごめん」
“故郷に残してきた女”というのはライナーが告白を断る時の常套句だった。
初めは告白を有耶無耶にするためのものかと思われていたが、何度もそれが続けば「まさか本当に？」となり、噂となるのが人間である。
そしてそれが104期まで届くのもそう遅くは無い話であった。
「…ライナー、君またAを盾にして告白断ったんだろ？」
「悪いかよ、…ありゃアイツも俺のこと好きだろ。こんなとこで新しく女作ったなんて聞かれたら失望されかねない」
「はぁ…いつまでもAがあんたを好きだなんて分からないでしょ。おめでたい野郎だね」
「アイツが他の男に揺れるわけないだろ、…Aは俺のだ。」
「いい加減気持ち悪いよその独占欲、ならとっとと答えてやればよかったじゃないか」
アニからトゲのある言葉を向けられ少し眉をしかめるが、ライナーは小さく首を振って「いや」と一言言った。
「……俺が死んだら、それを引きずることになるだろう」
「……」
「…そう、かもね。Aってそういう子だよね」
確かに、と思ったのアニも口を噤み、ベルトルトも頷いてAの顔を思い浮かべた。
結局アニもベルトルトもAの泣き顔には弱いのである
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作者名：ふりこ | 作成日時：2022年3月3日 14時
