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「寒い」
首にグルグルと巻いたマフラー。数分後、これを外した無防備な状態で冷蔵庫ではないのかと錯覚するほどに冷えきった体育館に長い時間身をおかねばならない。
億劫だと、不思議とそうは感じなかった。
「おはよう、逆崎」
「おは。宮その格好寒くないん？」
一番上の下駄箱。そこが彼、宮侑の下駄箱だった。私はそこから二段下。後ろからすっと伸びた手は、その一番上の下駄箱を開けた。手にはグルグルと何か巻かれている。
「朝練しとったから」
「それ本気？部活なんてあるわけないやろ、今日」
なんせ今日は自分達がこの学校に来る最後の日なんだから。「俺はスポーツ推薦やからな。ええねん、特別に第二の鍵借りた」そう平然と言う彼に少しだけ呆れた。
「卒業式の日にまでやらんやろ、普通。スポーツ推薦やからこそ、今日ぐらいやらんでもよかったんやないの？」
「アホ。ルーティーンって知っとるか？」
「はいはい」
二人ならんで教室に向かった。「なんや変な感じやなあ」ポツリと宮がそうこぼす。肩から少しずり落ちてきたスクバをぐっと担ぎ直した。
「なにが」
「もう高校生終わりとか、考えられへん」
「ああ、それなあ」
同意。ついこの前入学して、それからは一年も二年も三年も、ずっと同じような進路の話を聞いて、ずっと想像し、考えてきた未来がすぐ目の前にある。
高校生ではない自分を何度だって想像してきたはずなのにどこか実感がわかなかった。
「宮は大学でバレーして、ほんでプロになんの？」
「おん。逆崎は？」
「いろいろ」
宮は不満げに「なんやねん、いろいろって」と私を見下ろした。
「俺は答えたのに不平等やん」
「いろいろやねんもん。専門いって、沢山学んで、そっからやりたいこと全部やんねん。カメラいじったり、文を書いたり、ほんで世界中飛び回ったり出来たら最高やな。演技とか、ほんなこともやりたいなあ」
「欲張りやな」
「欲張らんでどうするん。自分の人生やで。やりたいことひたすらやって、生きる。お金はこの際最低限でええわ」
「逆崎、かわっとるってよく言われへんか？」
「言われるで。まあほとんど宮やけどな」
二人揃って立ち止まる。自分達の教室の前だった。中からはザワザワといつもより少し大きいざわめきが聞こえる。
「式で泣くんちゃう？宮」
「そらお前やろ、逆崎」
前と後ろ。わざわざ別の扉から同じ教室にはいる。互いの友人に囲まれながら、私達は笑う。
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える(プロフ) - れいさん» ありがとうございます！本当に励みになります。これからもハイキューのキャラをお借りして作品を作るつもりなので、ぜひ彼らの紡ぐ物語を見守ってもらえれば幸いです(*^^*) (2020年3月22日 17時) (
レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - これからも応援してます！ (2020年3月22日 16時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - めちゃめちゃ感動しました。えるさんの作品、大好きです！ありがとうございました！！ (2020年3月22日 16時) (レス) id: 58d70e644d (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - りき。さん» ありがとうございます(*^^*)短編だからこそ密度が濃いものにと思って書いたので、そうおっしゃってくれてとても嬉しいです。次回作も予定しておりますのでぜひ目を通していただければ幸いです(*^^*)読了ありがとうございました！ (2019年11月22日 20時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
りき。 - こんな素敵な作品を読ませていただき、有難うございました。 (2019年11月15日 23時) (レス) id: dfeb754ef4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：える | 作成日時：2019年10月27日 12時
