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「松川さんはなんでこの学園に?」
半壊した王都。崩れた建物の瓦礫がゴロゴロとそこらじゅうに転がり、けれど空は清々しいほどの晴天だった。
王都は一度も整備されることなく、歴史としてここら一帯はかつてのままの姿で残されている。不安定な足場を踏みしめ、松川とAは横にならんで歩いていた。
ちなみに医務室でのびている生徒が多いのも彼らの仕業である。
「おー。世間話か」
「ま、ですねえ」
松川はチラリと目線を少しさげてAを見た。それからまた、前へと視線を戻す。「魔法が使えたから」
「んで、そこそこセンスもあるなって」
「魔法がそこそこ使えるならまあ、この学園に入るのが一番将来安定ですからね」
魔法が使えても入れないものもいる。その前提が松川にないのは、彼の言うとおりそこそこ魔法についてのセンスがあったから。
魔法の実力が無いものなどこの学園にはいない。それは魔法が使えないAを例外としてだが。「お前は?」
「私ですか?」
「そ」
Aは「私の話じゃなくて、松川さんの話しましょーよ」と口にする。
「そーゆーはぐらかしは俺には通用しないぜ、逆崎」
「ええ……」
困ったようにAは笑う。「訳ありですよ」肩をすくめて言った。
「その訳ってのを教えろよ」
「んー」
Aは目を伏せる。「松川さんは憑き人について、どれだけご存じですか?」
「一般常識程度には」
「私がこの学園に入った理由は、それです。怪異を祓うため。人間に戻るため」
魔女を、殺すため。Aがこの学園に入学したのは、魔女と戦う機会がこの学園の生徒には与えられてしまうからだった。
魔女が再び再来したとき、一般人は間違いなく避難させられてしまう。けれどこの学園の生徒は、望む望まず関係なく魔女の元へ駆り出されるだろうとAは踏んでいた。
優秀な人材が集まるこの学園の生徒が、少しでも人手がほしいそんな時に駆り出されない訳がない。
「不死なんて、下手した喉から手が出ても欲しい能力だ」
「不死ほど完成されたものじゃありませんよ。私はちゃんと死んでます。生き返るだけで、体が元に戻るだけで」
「つまりお前は死ぬために来たわけだ」
Aは返事をしない。顔にはいつも通りの笑顔が貼り付けられている。
「馬鹿なやつ」
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R(プロフ) - めっちゃおもろいです…更新、待ってます🙇♀️ (2月25日 1時) (レス) @page35 id: a38d8c3d1f (このIDを非表示/違反報告)
ワグマン - パロ系あんまり好きじゃなかったんですけどこの話読んでめっちゃ好きになってしまいました!!更新頑張ってください(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年8月4日 21時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
あーさん(プロフ) - すっごく面白くて一気読みしてしまいました…!ダークな雰囲気が根底にある設定大好きなのとバトルシーンもワクワクします。もう本当にツボです…!笑 これからも応援しています(o^^o) (2020年6月5日 9時) (レス) id: 19c0d362e8 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 咲夜さん» コメントありがとうございます!気ままな更新ですがどうぞお付き合いください(*^^*) (2020年4月29日 13時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
咲夜 - 面白いです(* >ω<)。更新頑張ってください。続きが読みたいです(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年4月29日 13時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2020年3月13日 15時