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天童覚は異質だ。
最初にそう言った人間は彼と年の変わらない子供だった。子供だからこその真っ直ぐな言葉はあまりにも残酷で。
「あの女のほうがイカれてるっつーの」
パチリと目を覚ました天童は白い天井を見上げてそう口にした。その口許はわずかに弧を描いている。
どーぞ?──
この世に銃口をこめかみにつきつけられてなお、あんな風に笑える人間はどれだけいるだろうか。
おそらく片手でことたりる。
「あの女っつーのは青城んとこのお姫様のことか?」
「あれれ、英太君なんでいるの?」
勢いよく助走をつけて起き上がる。自分が寝ていたベッドに腰かけるチームメイトに天童は疑問の言葉を投げかけた。
そんな天童に瀬見は眉を寄せる。
「やられたからだよ。言わせんな」
天童と同じく、瀬見もどうやら戦線離脱したらしい。「あーりゃりゃ」天童は肩をすくめた。
「今始まってどんくらいたったの?」
「一時間半」
「……こりゃお説教コースだなあ」
苦笑。王者白鳥沢の人間が、始まって一時間半で離脱。異例の事態だった。「ん?」異例。
「医務室人多くね?」
戦闘不能になった人間は教員の魔法によって医務室へ飛ばされ、そこで治療を受ける。チーム戦での一時間半の経過はまだまだ序盤であり、そうそうに戦線離脱する人間は多くない。
にもかかわらず、天童が見渡した医務室は人で溢れかえっていた。全員が治療済みの状態で沢山のベッドに横たわっている。
「医務室2もいっぱいだってよ」
「はあぁあ??」
あり得ない。一年ならまだしもちらほらと見知った顔も見える。「どゆこと?」と首をかしげる天童に瀬見はため息をついた。
「闘技場いくぞ」
闘技場に向かう。コツンコツンと響く足音は二つ。「そういや」
「お前、青城のお姫様にやられたんだってな」
「うえー、誰から聞いた?」
「普通に、少し前に目覚ました奴に聞いた」
「……ま、事実だケド」
不服そうに。「珍しいな。読み違いでもしたか?」天童は考える。むしろ動きの予測は今まで以上に分かりやすく簡単だった。「強いて言うなら」
「相手の実力を知らなすぎた」
逆崎Aという人物の本心をあまりにも知らなかったのだと。否、理解していなかったのだと、そういうこと。
「まさか、薬の調合まで出来るとは思わないじゃん?」
「ゲッ、初見殺しだな」
瀬見は顔を歪めた。
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R(プロフ) - めっちゃおもろいです…更新、待ってます🙇♀️ (2月25日 1時) (レス) @page35 id: a38d8c3d1f (このIDを非表示/違反報告)
ワグマン - パロ系あんまり好きじゃなかったんですけどこの話読んでめっちゃ好きになってしまいました!!更新頑張ってください(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年8月4日 21時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
あーさん(プロフ) - すっごく面白くて一気読みしてしまいました…!ダークな雰囲気が根底にある設定大好きなのとバトルシーンもワクワクします。もう本当にツボです…!笑 これからも応援しています(o^^o) (2020年6月5日 9時) (レス) id: 19c0d362e8 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 咲夜さん» コメントありがとうございます!気ままな更新ですがどうぞお付き合いください(*^^*) (2020年4月29日 13時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
咲夜 - 面白いです(* >ω<)。更新頑張ってください。続きが読みたいです(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年4月29日 13時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2020年3月13日 15時