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次に目を開けると見覚えのない部屋だった。豪勢な椅子と、きらびやかな装飾……などはすでに見る影をなくしているが、それでも広く、デザインせいのある柱の彫刻。
いわゆる玉座の間と言われるような場所だ。今は王政ではないため王なんてものはいないけれど、つい数十年前まで存在したそんなお伽噺のような人物は確かにいたのだと実感する。
「【通信 矢巾秀】」
一通り見渡してからそう口にした。暫くすると「よ、逆崎」と、矢巾さんの声が聞こえた。
便利なものだな、とネックレスも撫でる。
「お前は今……っと、玉座の間か。王城に今いるのは松川さんと、あと金田一。お前と相性悪い敵だと白鳥沢の天童さんと烏野の主将」
「了解です。松川さんの位置教えてもらえますか?」
「おー。逆崎が今いるのは最上階だから、そこから三階下の一番端の部屋に松川さんいるっぽい。くれぐれも松川さんとはちあうまで他の敵とエンカウントしねえようにして。俺も動くから、またなんかあったら連絡しろよ」
「はい」
通信が切れる。さて、と扉をそっと開けた。足音も人の気配もない。グッと足を踏み込んで走り出そうとすると、限りなく薄い殺気に後ろへ後退する。
「……スナイパーいんの?まじ?」
窓が割れ、壁に銃弾がめり込んでいる。窓が割れた音はあまりにも大きく、松川さんまで無事にたどり着けるか分かったもんじゃない。
矢巾さんがそのスナイパーの位置を教えなかった所を考えると、多分スナイパーは1年生で、あまり手札がばれていない人であろうことは想像がついた。
「……急ご」
澤村さんとはちあえば言わずもがな厄介だし、天童さんなんてそもそもどんな魔法を使うのかさえ知らない。
矢巾さんが相性が悪いと言うのなら、きっと悪いのだろう。本音を言うと、松川さんと早く合流して天童さんにギャフンと言わせたかった。
なるべく腰を低くして、窓より下の高さで走る。こうしてしまえば直で弾が当たることはない。ただ、さっきの一発は大きな音をたてるためというのと、威嚇射撃であるから十分役割は果たしただろうけれど。
「(階段みっけ)」
まず一階。手すりを使って器用に滑りながらおりる。「やっほ〜Aちゃーん」聞こえた声にすぐ身体を捻った。
「今手狙いましたね」
「そんぐらいなら軽々しく死なないでしょ?」
派手な赤髪。にやついた顔。
「初戦からAちゃんとかラッキ〜」
彼の銃口から煙が上がっていた。
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R(プロフ) - めっちゃおもろいです…更新、待ってます🙇♀️ (2月25日 1時) (レス) @page35 id: a38d8c3d1f (このIDを非表示/違反報告)
ワグマン - パロ系あんまり好きじゃなかったんですけどこの話読んでめっちゃ好きになってしまいました!!更新頑張ってください(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年8月4日 21時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
あーさん(プロフ) - すっごく面白くて一気読みしてしまいました…!ダークな雰囲気が根底にある設定大好きなのとバトルシーンもワクワクします。もう本当にツボです…!笑 これからも応援しています(o^^o) (2020年6月5日 9時) (レス) id: 19c0d362e8 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 咲夜さん» コメントありがとうございます!気ままな更新ですがどうぞお付き合いください(*^^*) (2020年4月29日 13時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
咲夜 - 面白いです(* >ω<)。更新頑張ってください。続きが読みたいです(*- -)(*_ _)ペコリ (2020年4月29日 13時) (レス) id: d570b5d827 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2020年3月13日 15時