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立ち込める硫黄の煮える臭い。「あ?」と岩泉さんは首をかしげて、他の生徒も臭いに鼻を押さえつつも、私達の魔方陣を見ていた。


どうやら私達が一番早く魔方陣を完成させていたらしい。


「……冗談でしょ」


ひきつる頬。突き刺さる大勢の視線に頭を抱えたくなった。


ブラックドッグ。その名の通り黒い犬。目が赤い妖精。妖精は妖精でも不吉の象徴である。もっといえば、亡霊。


今回の召喚術は基本的にランダムで妖精が呼び出されるが、低級な妖精ばかりで、数刻ぽっちの仮契約を結ぶだけの予定だった。


にもかかわらずブラックドッグ?冗談じゃない。


「これ、見えますか」


実習室に響き渡るような声で言うが反応はない。何を言っているんだ、と皆同様に言いたげだ。「逆崎、なんか見えてるか」岩泉さんの言葉に頷く。


「ブラックドッグです。私にしか見えてないってことは……ロックオンですよね」


考えるよりも先に体が、というのはよくいう。横に転がと、赤い炎が少しだけ私の髪の毛をチリっと焼いた。「はあ!?ブラックドッグ!?」と声を荒げる岩泉さん。


「たまったもんじゃないってね」


ジリジリとブラックドッグが近づいてくる。こんな昼間に呼び出されて腹でもたっているのだろうか。


ゴクンと唾を飲み込んでナイフを構えた。


「落ち着け馬鹿崎!ブラックドッグをもう一回この魔方陣中いれろ!」


「馬鹿ざっ……!あー、はい。了解です」


とは言ったものの、突然の先輩からの暴言に心を痛める。ついこの間までは随分腫れ物を扱うような態度であったのに。


まあ、それよりかははるかにましであることに間違いはないのだが。


「グルルルルッ……」


「ひー、こわ」


なかなか死なない私をまるで向かえにきたかのようだった。あちら側へつれていってくれるのなら、とも思わないでもない。


けれどギラギラとした赤い瞳が怖くて、また今度でいいと思った。はははは、とそんな自問自答に笑う。


「逆崎さん!落ち着いて、けして刺激しないように誘い出してください」


召喚術担当の武田先生が声をあげた。刺激しないようにというのはすでに不可能に近い。どう考えても目の前のコイツは機嫌が最悪だ。


「こっちだ……よっ!」


魔方陣へと走る。吠えるように吐き出された赤い炎の熱を背中で感じながら、魔方陣へと突っ込んだ。

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える(プロフ) - 汐見さん» コメントありがとうございます!賛否ある設定の物語ですが、そう言っていただけて幸いです(*^^*)これからもよろしくお願いいたします (2020年3月1日 11時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
汐見(プロフ) - 初見です!とても面白かったです!更新頑張ってください! (2020年2月29日 16時) (レス) id: dc0ff62b63 (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - 凜乃さん» ありがとうございます!長編の予定ですので、ごゆるりとお付き合いください。わざわざコメントありがとうございました(*^^*) (2019年12月12日 21時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
凜乃(プロフ) - 毎回とても楽しみにさせて頂いてます。更新頑張ってください (2019年12月11日 23時) (レス) id: 8218d9be2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2019年12月4日 17時

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