検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:106,755 hit

20 ページ20

炭治郎に前世の記憶はない。


あの悲劇も、仲間達も、努力した日々を。炭治郎には一切記憶として残っていないのだ。


それなのに彼が口にした名前は間違いなく前世の宿敵である。ほぼ無意識的に発せられたものではあったが、彼の体が鬼舞辻無惨への恐怖や怒りを覚えていた。


「こんな暗い中、想い人でも待っているのか?」


所変わって場所は路地裏。日は既に落ち、チラチラと星が光っている。辻村はそんな声に顔をあげた。


「貴方は」


警戒を含んだ声で言う。人を待っているというのは間違いなかった。しかしそれは事件の捜査へ行ったまま帰ってこない放浪癖のある殺人探偵で、好青年のような柔らかい笑顔を浮かべている和服の青年ではない。


言いたい放題言われた挙げ句、勝手にどこかへ捜査に出掛けてしまった監視対象に怒りを覚えながら、辻村は人通りなどほぼない路地裏でその綾辻に連絡をしていたのだ。


内容は勿論、鬼殺隊という青年の足取りをつかんだという報告であった。


あの風が強い日からほんの数日。流石エリートエージェントといったところである。


「鬼狩りだよ」


しかしそんな彼女も、まさかこれだけの労力や気力を消費してまでつかんだホシが、自ら目の前に現れるなどとは思っても見なかった。


「君は政府の人間だろう?そんな気がする」


わずかに向けられた殺気に辻村は動揺する。彼は政府側の人間ではないのか、と。


「よくやった。流石エリートだな、辻村君」


そんな中、二人とは違う別の声が混じる。「まさか見つけるだけでなく、こうやって呼び寄せてくれるとは」どこか刺がある口調に辻村はムッとする。


「綾辻先生、今までどこにいたんですか!」


「なに、少しな。それより貴様」


と、綾辻はキセルをAに向ける。「最近の若い子は口が悪いなあ」苦笑ぎみに彼は笑った。


「鬼狩りで間違いないな」


「間違いないね」


「そうか。辻村君に殺意を向けたということはもう気づいているようだな」


「僕の力じゃあないけれど」


Aは言う。「なんなら今までずっと、欺けられていたから」と、自傷ぎみに。


「話すことがある。辻村君、いいだろう?」


辻村は思わず深いため息をこぼす。綾辻の言葉には強制するような圧と強さがあった。拒否権などはなからないのである。

21→←19



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (133 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
299人がお気に入り
設定タグ:文スト , 鬼滅の刃 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。