検索窓
今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:106,741 hit

9 ページ9

───
──



最悪な再開。


「逃げろ!いいな、合図したら走れ!」


ヨコハマ、夜の街。その一角に刀を握るAと、鬼、そして少年がいた。


住民の避難は既に完了していた。なるべく建物を壊さないように、けれどそれに気を配りすぎないように。ニタニタと笑顔を浮かべる鬼は、けして弱くない。


「立て、炭治郎!僕がいる!だから頼む立ってくれ!」


一向に立ち上がらない少年。前世の名を竈門炭治郎という。長男気質で、責任感のある、優しい少年だった。


しかし今の彼は普通の少年である。前世と同じような人柄を持ち合わせていようとも、あの血反吐を吐くような努力や時を覚えていない。


揺れる瞳。震える肩。それは明らかな恐怖の表れ。


Aには炭治郎を守る義務があった。前世で彼が炭治郎含む後輩にしてやれたことはほんのわずか限り。Aにとってはそれも一つの心残りといっていいだろう。


「ああ、お前か。お前があの方のいう記憶持ちなんだな」


「……冗談だろ?」


あの方。それは鬼舞辻無惨のことだろう。それが、Aが前世の記憶を持っていることを知っている。


「勘弁してくれ、それじゃあ、ああ。思い出した」


江戸川が言っていた言葉。


鬼が出たらしい。どうやら一人の人間を追ってね──


「彼も記憶持ちか」


随分厄介な事になった。目の前の鬼は上品な笑みを浮かべて「その顔は美しいな」と、Aの歪んだ表情を見ていう。


ずっと閉じられていた瞳を薄く開くと、そこには上弦 陸と確かに刻まれていた。


炭次郎を守りながら戦うと思うと部が悪すぎる。


「炭治郎、立て。死ぬぞ」


Aにしてはきつい口調。「は、はいっ!」呼吸を荒くするも、彼はそう立ち上がる。そしてクルリと背を向けて、Aの邪魔にならないよう走った。


こんな状況を彼は既に飲み込み、自らが出来ること最大限の事をやってのけた。


皮肉なことに、それは前世から受け継がれた素質とも言える。


「なあ、君。僕と話をしよう」


「構わないぞ?あの方への土産話くらいにはなろう」


それは互いの殺意を交えたまま。

10→←8



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (133 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
299人がお気に入り
設定タグ:文スト , 鬼滅の刃 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。