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最悪な再開。
「逃げろ!いいな、合図したら走れ!」
ヨコハマ、夜の街。その一角に刀を握るAと、鬼、そして少年がいた。
住民の避難は既に完了していた。なるべく建物を壊さないように、けれどそれに気を配りすぎないように。ニタニタと笑顔を浮かべる鬼は、けして弱くない。
「立て、炭治郎!僕がいる!だから頼む立ってくれ!」
一向に立ち上がらない少年。前世の名を竈門炭治郎という。長男気質で、責任感のある、優しい少年だった。
しかし今の彼は普通の少年である。前世と同じような人柄を持ち合わせていようとも、あの血反吐を吐くような努力や時を覚えていない。
揺れる瞳。震える肩。それは明らかな恐怖の表れ。
Aには炭治郎を守る義務があった。前世で彼が炭治郎含む後輩にしてやれたことはほんのわずか限り。Aにとってはそれも一つの心残りといっていいだろう。
「ああ、お前か。お前があの方のいう記憶持ちなんだな」
「……冗談だろ?」
あの方。それは鬼舞辻無惨のことだろう。それが、Aが前世の記憶を持っていることを知っている。
「勘弁してくれ、それじゃあ、ああ。思い出した」
江戸川が言っていた言葉。
鬼が出たらしい。どうやら一人の人間を追ってね──
「彼も記憶持ちか」
随分厄介な事になった。目の前の鬼は上品な笑みを浮かべて「その顔は美しいな」と、Aの歪んだ表情を見ていう。
ずっと閉じられていた瞳を薄く開くと、そこには上弦 陸と確かに刻まれていた。
炭次郎を守りながら戦うと思うと部が悪すぎる。
「炭治郎、立て。死ぬぞ」
Aにしてはきつい口調。「は、はいっ!」呼吸を荒くするも、彼はそう立ち上がる。そしてクルリと背を向けて、Aの邪魔にならないよう走った。
こんな状況を彼は既に飲み込み、自らが出来ること最大限の事をやってのけた。
皮肉なことに、それは前世から受け継がれた素質とも言える。
「なあ、君。僕と話をしよう」
「構わないぞ?あの方への土産話くらいにはなろう」
それは互いの殺意を交えたまま。
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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時