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喫茶店の子供からすると少し重たいトビラを開くと、
ピアノの音が聞こえた。
それは儚く、消えてしまいそうな音で素敵なメロディーを奏でていた。
『あなたが噂の日本人?』
「…あぁ、君は?」
『日本からの留学生です。短期間ですが。』
「君、ヴァイオリンをやっているのかい?きかせてよ」
『あまり上手くなくてもよろしければ』
「是非」
それが春樹との出会いだった。
春樹とはすぐに意気投合し、
お互いの話や、音楽について沢山話した。
寮の門限時間なんて毎日のように破っていた。
しかし凄く幸せそうな顔で帰ってくるものだから、
寮母もなかなか怒れなかったらしい。
留学がの終わりがすぐそこに来た時、
私は思い切って春樹に尋ねた
『また、春樹と会える?』
「一般人同士が会うのは難しいかな〜」
笑いながら答える春樹にムスッとしながらリンゴジュースを飲み干した。
「そう言えばこの前、キラキラした人生って言ってたよな?
アイドルなんか、興味無いかい?」
『あいどる?歌って踊る人達のこと?』
「ははっ、まぁ、そういう奴らだな。
ゼロを超えるアイドルになったら俺が迎えに行ってあげるさ
お前にはその素質がある。どうだ?」
『アイドルに、なるよ。ゼロを超える。
だから、また会いたい』
「じゃあまずはアイドルになるために計画書を書こう、
その後は自分で考えるんだ」
この時に初めてアイドルになりたい、と口にした。
春樹との最初で最後の約束だった。
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作者名:ReePhantom | 作成日時:2023年10月5日 23時