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1章 2節目 歪な夢 ページ3

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「最近、変な夢を見るの」


クルミッシュはマグカップの中のカフェオレをクルクル回しながら呟いた。
ベーコンを口にくわえたまま、ブウェルガは首を傾げる。
「変な夢?お前に限って珍しいな」
「うん、自分でもそう思う。元気しか取り柄ないもんね、クルミ」
クルミッシュはそう言うと、ため息をついてマグカップに口をつける。
「そ、そんな悲しい事言わないでクルミちゃん…。でも、確かに珍しいね。そんなに変な夢なの?」
ニコラスはフォークを置いて、話を聞く体勢をとる。
ブウェルガは食事を続けたままだが、耳だけはクルミッシュに向いているようだ。
うん、とクルミッシュは頷く。
「…ニコラスお兄ちゃん、ブウェルガお兄ちゃん。数十年前にあった戦いの事、覚えてる?」
クルミッシュはいきなり、問いかけてくる。
一瞬混乱しかけたが、恐らく『あの』戦いだと察し、ニコラスは頷く。
「うん。ガレリアンが起こした、戦争の事だよね?」
「うん…」
クルミッシュは表情を暗くする。

…あの戦い。
数十年前に起こった、クインタレッリ王政国によるアルカミリア侵略戦争の事だ。
前国王であるガレリアン・クインタレッリが、アルカミリア王政国の物資を横取りする為に侵略し、アルカミリアの前女王であるヴィヴィエル・ベルザローガを殺害したのだ。
そのせいで王都は壊滅状態となったが、ニコラスやクルミッシュを始めとする英雄が勇敢に戦ったことから、戦争は全域に広まる前に幕を閉じた。
その後、ガレリアンは処刑され、ヴィヴィエルの遺書により今は彼女の使い魔であるセーレが政治を行っている。

「でもクルミちゃん、それと夢に何の関係があるの?」
ニコラスは眉を顰める。
戦争が夢としてフラッシュバックしているのかと思ったが、どうやらそうではなさそうだ。
もしそうなら、こんな回りくどい言い方はしないだろう。
「…クルミッシュ、回りくどい言い方はやめろ。
簡潔に言え。私達は別に、馬鹿になどしない」
しびれを切らしたのか、ブウェルガはフォークを齧りながらクルミッシュを見る。
クルミッシュは不安げにしながら、微かに頷く。
顔色は更に悪くなったように見える。
「…ガレリアンの処刑。ガレリアンが首謀者。そう、クルミは記憶している。でも、何故かわからない…」

クルミッシュは顔をあげる。


「…私は夢で、戦争の中にいた。
でもそこに…いないはずの『天使』がいたの。
その天使は自分を…『ルシフェル』と呼んでいた」

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作者名:あイカらカイあ | 作成日時:2021年2月25日 20時

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