今宵、月夜に君は輝く。Ⅱ (ページ22)

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『今日は本当にありがとうございました』

「いーえ！」

ダンボールを持ち上げる。

ガムテープでしっかり固定したし、あとは丸ちゃんさんに渡すだけ

明後日、丸ちゃんさんがわざわざ取りに来てくれるらしい。

なんか一言メッセージとか入れた方が、可愛げあるかなって思ったけど、可愛げがあったところでどうにもならないこと思い出した。

何か言いたいことがあって、それを伝える口実で服を返したとかじゃなくて、シンプルに邪魔だったから。ぐらいの、強い女だと思ってて欲しい

実際は全然そんな人になれてないけど…

「玄関でいい？」

『あ、ありがとうございます』

私が持ち上げてたダンボールをひょいっと持ち上げて、軽々運んでくれる。

優しすぎる！なーんて思ってると、目が合う。
机の上に取り残された後回しにした煙草と

「あ、煙草」

煙草の存在に気づいたみたいで、2人で机の上を見つめる

『大倉さん、ライターありますか?』

「あるけど、、」

唐突に私がそんなことを聞くから、
大倉さんは少し怪奇な顔をしながらズボンのポケットに手をいれよくあるライターを取り出す

『最後に1本吸ってみたくて』

ずっと思ってた。章大くんが美味しそうに吸ってたあの煙草がどんな味なのか。

少しだけ、知ってみたい。

これも未練とかじゃなくて、きっとただの興味。
ということにしとこう

「むちゃくちゃ不味いで」

眉間に皺を寄せながら、絶対辞めといた方がいい！って念押しされる

『どんな味なのか気になるんです！』

「それ吸って、＂あぁあの人が吸ってた煙草はこんな味だったんだ、、＂ってノスタルジックにならん？」

『なるかもです…』

「じゃあ、あかん」

眉を下げながら大倉さんがポケットにライターを戻す

何とか吸ってみたい私は、大倉さんを説得する。

『1本だけ！』

「やめとき！ぜーーったい辛くなるで！」

まだ諦めのつかない私に大倉さんが、

「...じゃあ、問題。昔俺はAちゃんの元彼が吸ってた煙草とおなじのを吸ってました。でも今では違う銘柄を吸ってます。その理由は？」

ため息を吐き出してから唐突に始まったクイズ
大倉さんの表情がさっきまでとは少し違うのに気づいた。

大倉さんが一途に思い続けてた人がきっと原因。
いや、...過去形なんかじゃなく今も思い続けてるのかもしれない