羅刹の幻影は囁く part10

【289】＿＿アンSIDE ページ32

アン「あれ？Aは？」


みのりんとAのメイクについて話し合っていたら、いつの間にか本人の姿が見えなくなってた。さっきまでそこにいたのに…まさか、


アン「逃げたなぁ、A」

実里「ふふっ、でも店の中まで入ったのは少しの進歩ね。私が引っ張っても入ろうとしなかったから」

アン「そうなの？」

実里「アイツ、顔が整っててスタイルも悪くないでしょ？昔から着せ替え甲斐のある子だったのに………何でかしらね、自分から避けるようになったのよ。リックの事もあるから、可愛いものとかきれいな物が嫌いな訳でもないのに…ほんと、嫌になっちゃうわ」


「若いんだから我慢しなくていいのに」とぼやくみのりんは、手に持っていたコスメを棚に戻す。こういう言い方するって事は、やっぱりAとは付き合い長いんだ。

自分から避けるようになった、って……やっぱりコードのせいなのかな。
みのりんは、Aがどうしてコードをつけることになったのか、理由を知ってるのかな。



店長「フォークナーさん、いかがですか？」


物思いに更けていたが、この店の店長さんが話しかけてきた。若いけど、コスメの新情報とかやり方とかを教えてくれる良い店長だ。


店長「フォークナーさんは、あと２ポイントでポイントカード制覇ですからね！特別特典もありますので、是非お買い上げお願いいたします」

アン「あはは、今日でポイントカードコンプリートですよ。それより…僕らと一緒にもう１人、女の子がいませんでした？さっきまでそこで品物を見てたんだけど…」

店長「……ああ、あの“コード付き”の人なら先ほどお帰りになりましたよ」



あのコード付き、と協調しながら言ってきたこの人に思わず絶句してしまった。
そんな僕に気付かず、意気揚々と「自分が追い出したんですよ〜」と語ってる。

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