羅刹の幻影は囁く part4

【125】 ページ8

『今日、珂波汰には仕事を渡してあった。上ならそれくらい掴んでいる。戻るのは夜だと考えて…紹介状が手に渡るのは今日の夜だ』

夏準「僕らは偶々3人でいたから、届けられたというわけですね」

『あぁ、だから卑怯とかじゃないんだよ。どーせ、明日にはアイツ等の彫金もする羽目になる』

アレン「……そういうことなら」

『じゃ、ここにおいて』




鞄から黒のジュエリートレイを取り出し、机に置く。
3人はそれぞれ身に着けていたファントメタルを外し、そのトレイに置いた。



『……置けと言ったのは私だが、昨日メタル盗まれたばっかなのに素直に置く？』

アレン「え？だってお前が盗むわけないだろ？」

『またそうやって簡単に人を信じるから………いや、もういいや』

夏準「ここであなたが盗んでもすぐに取り押さえればいいだけですから」

『あー、そうですか』



素直な奴と腹黒の奴が揃ってて、頭が痛くなるな。
鞄から布を取り出し、ファントメタルが乗せられたトレイを覆うように被せる。



『彫金には時間を貰う。3つ分だから…終わるのは恐らく夜だ。終わったら呼ぶから、事務所に取りにきて』

アレン「え、見てちゃ駄目なのか？」

アン「ここでやるもんだと思ってた。できないの？」

『いや、スペースあればどこでも出来る…てか、見てるつもり？』




ダメなの？という視線を3人に向けられる。ダメではないんだが…。


『いや見るのはいいけど……本当に時間かかる。それに私自身集中する作業だ。物音とか喋り声だけで気がちって作業に集中できなくなる。とどのつまり…』

夏準「終わるまで物音を立てたり、喋ったりは出来ないと？」

『あぁ。物音一つあるだけで集中の度合いが違うからな』



我慢しながらしたって、碌な品物が出来るわけないし。



アレン「じゃあずっと静かにしてる」

『トイレにも立てないんだぞ』
アレン「我慢しとく」

『いや、体壊すぞ、それ』

アン「条件はAも一緒なんでしょ？飲み食いもできなくて、お花摘みにもいけないのは」

『………暇つぶしにスマホみたり、読書したり、トラック書いたりも出来ないぞ』




それでもいいという3人。
暫く悩んだが、たぶん見せないと一生このままだな。



『わかった、ここでやるよ』






リビング荒すぞ、と言って、立ち上がった。

【126】→←【124】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す