羅刹の幻影は囁く (ページ7)

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【5】＿＿The Cat’s Whiskers SIDE ページ7

四季は自分の指先で遊ぶチンチラが人馴れしている事に気付いた。

四季「あ、あの。この子、凄く人馴れしているから……多分、飼い主さんがいるんじゃないかと」

神林「だとしたら余計に返さねぇと不味いだろ。これから俺たちCLUB paradoxに入るんだぞ」

西門「確かに、飼い主も心配するだろうね。だが、この人混みからどうやって……リュウ、飼い主さんを本当に見ていないのかい？」

リュウ「問題ナッシーング！リュウ君がボスになるから！」

神林「問題大ありだ！！！もうウチにおけねぇっただろ！」

ズレた返答をするリュウに怒鳴る神林。
四季は手元のチンチラを見つつ、飼い主が探していないかと周りに目を配らせる。

ふと、四季の指で遊んでいたチンチラが動きを止め、ある一点を見つめる。

『リック』

ただ一言、人の声で騒がしい湾岸エリアに異様に響く。
バッとチンチラ、リックが四季の手元から降りて、自分を呼んだ人物の元へ飛びついた。

『勝手に行くなって言っただろ』

咎めるようにそう言い、フードの中にリックを詰めた。
そして此方を見る四季たちの方に一度視線をやると、『どうも』とだけ呟き、人込みに紛れていった。

西門「あの子が飼い主さんみたいだね」

神林「いや、連れてきたのはこいつだけどよ…“どうも”だけって」

リュウ「あ～リュウ君の子分２号が～シッキーのお友達が～」

四季「え、僕…リュウ君の子分だったの？」

西門「まぁ、何はともあれ飼い主さんと出会えてよかったじゃないか」

神林「なんか不服だが…ま、面倒ごとにならなくてよかったな。お前も、もう連れてくるなよ」

再度言い聞かせるようにリュウの頭をはたいた神林。
「痛い～！」と叫ぶリュウを心配げに見ていた四季は、女が去っていった方角をジッと見つめた。