羅刹の幻影は囁く (ページ26)

今日:3 hit、昨日:44 hit、合計:148,397 hit

【24】ページ26

『ソイツは？』
理事長「授業があるから大学に来る予定だね」
『(来る予定ってまだ来てないのかよ)手荒な真似してもいいんですか？』
理事長「どうぞ。違法のメタルを持っているなんてことが流れれば、彼自身も将来が台無しになるでしょうし」
『…そら、どーも。しかし、学生単体で違法メタルを所持しているのが珍しいですね』

チラリと理事長を見ると、ニコニコ笑っているが、対して秘書はブルブルと震えている。
…ああ、なるほど。広めた奴が大学内にいるのか。

理事長(狸)は人のよさそうな笑みのまま、私に違法メタルを所持している学生の写真を見せてきた。金髪にガラ悪そうな…典型的な奴だな。

理事長「ジェイ・シャークレット。大学3回生だ。あとこれが彼の今日の時間割だ。授業中は入っていくのをやめてくれよ。その間、暇なら学内の施設を利用しても大丈夫だからね」

写真と共に手渡される時間割表に目を通す。
3限目にマークがある。今の時間が1限目だと考えると………コイツ、来るの昼休みの後では？
うわっ、ダルッ…と口に出したいが目の前の狸がいるので口を紡ぐ。

『それじゃあ、適当に回りますので』

これ以上ここにいたら、余計な言葉が出てきてしまう。
写真と時間割を鞄に仕舞い、部屋を出ようとした時、「あぁ、そうそう」と言葉をかけられた。

理事長「うちにはBAEとThe Cat’s Whiskersという2つのチームメンバーがいるんだが…機会があれば、彼らのメタルも調整してくれないか？」

『私は紹介制と身内しかしません』

理事長「そうか、残念。君は非常に優秀な彫金師だと聞くからね」

『はいはい、どーも』

ここにいたら話に付き合わされる。
それが嫌なので、タヌキ面する理事長に背を向け、部屋を出た。

『………約2時間半…か』

ダリィと誰もいない廊下でようやくその言葉をつぶやいた。
帰るわけにもいかないし……適当に見て回るか。

渋々と足を動かし、狸が蔓延る理事長室前を後にした。