羅刹の幻影は囁く (ページ36)

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男「あれ？西門先生、その子と知り合いなんっすか？」
西門「ああ、私のゼミを受講してくれている子だよ。卒論についての話がしたくてね」
男「卒論ってことは4回生？！」
男2「え、マジで？」
西門「そういう事だ、ナンパをするならもう少し違う子を選ぶんだね。でも誰が相手でも無理強いは駄目だよ」

「それじゃあ」と大した間をおかせず、私の背を押して歩きだす。
競歩だった足は早歩きになり、馬鹿2人からあっという間に距離が開けた。

そして角を曲がった所で立ち止まると、「今朝とは真逆だね」と苦笑を浮かべた。

『ご迷惑、おかけしました』
西門「いや、私も今朝同じ手で助けてもらったから、謝る必要はないよ」

すると、言い辛そうに首の後ろを掻き「寧ろ勘違いしていてすまない」と逆に謝ってきた。
勘違い？何のことだ？
私の表情から台詞を察したのか、気まずそうに「性別のことだよ」と言う。

『性別？』
西門「いや、今朝声をかけた時は男性かと思ってしまって……まさか、女性だとは」
『………ああ。顔を隠してましたし、体型も分からないでしょう。そんなに気にしてませんから』

フードで顔を隠して、ブカブカなパーカーを着用していたら男とも間違えたくなる。
実際、その方が都合はいいんだけども。

・・・・・て、そんなことはどうでもいい。

『あの、たびたび失礼ですけど、食堂はどこですか？』
西門「食堂？食堂なら、西校舎の方だが…」
『ご無理なければ連れて行って下さい(じゃないと多分また流される)』

学生の人波ってCLUBのオーディエンスみたいだ。甘く見ていた。
切羽詰まった様子の私を見て笑った彼は「ちょうど私も昼食だし、一緒に行こうか」と快く了承してくれた。

今朝も思ったけど、この人、善人過ぎないか……？

『……あの』
西門「ん？何かな」
『失礼ですけど、人から無防備とか言われたことあります？』
西門「え？あぁ、よく言われるけど、なんでわかったんだい？」

何もしていないんだけど、罪悪感凄い。
人を疑う事を覚えてほしい大人だな。