43話 ページ5
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与謝野がAを無事に寮に送った、と聞いた太宰は自分の宿舎に帰る前に一度Aに電話をしようとしたのだが、彼女は電話に出なかった。心配が募る中彼女の部屋に行きインターホンを押せばちゃんと彼女は其処にいた。安堵して部屋に入れさせて貰えばいつもと違うAの格好。
そして_____Aから感じる中也の匂い。
本当に匂いがした訳ではない。唯の感である。だが、太宰はこう云った感には昔から鋭い。だから、中也に会ったのか、と聞いて頷いたAを気づいたら押し倒していた。
唯の嫉妬だ。
醜く酷い抑えが効かない感情の一つ。
「ハァ……中也に何された?」
一瞬Aから唇を離し、そう問う太宰だがAが答える前にもう一度唇を奪った。
『やっ……んぅ……んっ』
太宰の舌が逃げ惑うAの舌を絡めとる。
そして歯止めが効かなくなった太宰はAのワンピースの裾を捲り手をその滑らかな素肌に滑らせた。
『やっ!太宰さん!』
その感触に一気に思考を呼び戻したAが太宰から顔を背け、そう叫んだ。
そのAの声に太宰もハッとする。そして気づいた、今自分は彼女に何をしているのか。
『はぁ……はぁ…』
頰を紅潮させ、息を乱しているAを視界に捉え太宰はそっと彼女の上から退いた。
そして、ソファーの隅に腰掛け自分の手で顔を覆う。
『はぁ……太宰、さん?』
「すまない、A。
私はどうかしていた……。本当にすまない」
太宰さんはゆっくりと立ち上がる。
そのまま太宰さんは此方に背を向けたまま
「もし君に記憶が戻ったら、君は中也を選ぶのかい?」
と、云った。太宰さんの表情は見えない。
この人が何を考えて、どう思ってそう云っているのかもわからない。
「すまない。忘れてくれ」
太宰さんは最後にそれだけ云うと部屋を出て行った。
『うぅっ……わからない……わからないよぉ』
瞳から涙が溢れた。
悲しいのかも今の私は頭が混乱してわからない。何故、太宰さんが私にキスをしたのかも、太宰さんの言葉の意味も全部わからない。
頭を駆け巡っては消える声も記憶も全部、綺麗に洗い流せたらどんなに楽か。
でも、それが出来ないのは……きっと___
きっと
かけがえもなく大切な記憶だから
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Kigiri(プロフ) - 詞の選び方一つ一つがとても好きです。新作を心待ちにしています!! (2019年5月4日 19時) (レス) id: 9b7da1f6da (このIDを非表示/違反報告)
るーりー(プロフ) - とってもおもしろかったです!新作も楽しみにしています! (2019年5月4日 15時) (レス) id: 015d425faa (このIDを非表示/違反報告)
真緒(プロフ) - ン"ーーーー面白かったです!!!!!!番外編お願いします!!! (2019年5月4日 15時) (レス) id: 290bbc209c (このIDを非表示/違反報告)
陽香 - 沢山ある文ストの夢小説から,たまたま見かけて,面白そうだったから,前作の1話から今作の49話まで全て読みました。面白いと思います。次の50話の展開が気になりますね。今後も更新を楽しみにさせていただきますね(^_^)作者さん,頑張って下さい(^_^) (2019年4月22日 7時) (レス) id: 7be101f077 (このIDを非表示/違反報告)
Kigiri(プロフ) - ほんといつも読んでいてどきどきします!!もう穴が開くほど読み返しました!!((← 応援しています!がんばってください!!!! (2019年4月22日 3時) (レス) id: d36ce0e605 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月華桜 | 作成日時:2019年4月15日 23時