55話 ページ18
.
____冷たい……。
意識が戻った時感じた事だった。
手足が何やら冷たい物に触れていた。そして、軽く手に力を入れてみればジャラッと鳴った音に意識がはっきりとする。
『此処は?』
辺りを見渡すと薄暗い場所だった。土埃の臭いが鼻をつきその場所は所々瓦礫が積み上がっている。
私は先程まで何があったか思い出す。
そうだ、中也さんと太宰さんから離れた瞬間、誰かの声が聞こえてそしてそのまま気絶してしまったんだ。
『あの声は……』
「お目覚めですか?」
ハッと目を向ければドアがあったと思われる大きく開いた穴から一人の男が入ってきた。
声からして多分私を攫った人だと判る。
気を緩めては駄目だ。繋がれている鎖を見ればこの人は善い人でない事は確かである。
『如何して私を攫ったんですか?』
「攫うとは人聞きの悪い。私は貴方を助けてあげたのですよ」
『助ける?』
何を馬鹿な事を云っているのだろうか。この自分の状況からして“助けられた”なんて思える訳がない。だが、彼は微笑みながら私に近づいてくる。
「そう。私は貴方を助けた。
記憶をなくし苦しみ続ける貴方を無理に記憶を掘り返すような真似をする彼等からね。」
ドキリと心臓が嫌な音を立てた。この男が云った事を完全には否定できなかったから。
私は思ってしまったのだ。記憶がない私に優しくしてくれる二人。そんな二人に悲しい顔をさせる自分が嫌だった。だから私はそんな自分から逃げ、思ってしまった。こんなにも苦しいなら一層の事、________全て忘れて仕舞えばいいのにって。
何も云わず俯いてしまった私に男はニヤリと笑った。そして、彼は私の額に手を置く。
「貴方のその苦しみ私が全て消してあげましょう。
______異能力《一葉舟》」
彼のその言葉と同時に辺りに異能の光が現れる。そして、頭の中が真っ白になった。
.
227人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Kigiri(プロフ) - 詞の選び方一つ一つがとても好きです。新作を心待ちにしています!! (2019年5月4日 19時) (レス) id: 9b7da1f6da (このIDを非表示/違反報告)
るーりー(プロフ) - とってもおもしろかったです!新作も楽しみにしています! (2019年5月4日 15時) (レス) id: 015d425faa (このIDを非表示/違反報告)
真緒(プロフ) - ン"ーーーー面白かったです!!!!!!番外編お願いします!!! (2019年5月4日 15時) (レス) id: 290bbc209c (このIDを非表示/違反報告)
陽香 - 沢山ある文ストの夢小説から,たまたま見かけて,面白そうだったから,前作の1話から今作の49話まで全て読みました。面白いと思います。次の50話の展開が気になりますね。今後も更新を楽しみにさせていただきますね(^_^)作者さん,頑張って下さい(^_^) (2019年4月22日 7時) (レス) id: 7be101f077 (このIDを非表示/違反報告)
Kigiri(プロフ) - ほんといつも読んでいてどきどきします!!もう穴が開くほど読み返しました!!((← 応援しています!がんばってください!!!! (2019年4月22日 3時) (レス) id: d36ce0e605 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月華桜 | 作成日時:2019年4月15日 23時