【銀魂】俺の想い人は万事屋の旦那が好きなようで【沖田総悟】

【過去編】あの頃の2人 ページ33

.


「おい、お前」


俺がそいつの姿を見つけたのは数分後、道場の少し先にある大きな桜の木の下で蹲り地面を棒切れで突いていたその女に話しかける


「おい、聞いてんのか？」


「……聞いてない」


「聞いてんじゃん。」


聞いてないもん、とその女は地面に『聞いてない』と言う文字を書き出す始末。なんだこいつ




「お前、なんで剣術習いたいんだよ。やったところで男にはどーせ敵わないぜ」


「……そんなの、やってみなきゃわかんない」



「ぜってー無理。お前弱そう」


「…無理じゃないし、弱くない」


「無理」


「無理じゃない」


「無理。ぜってー無理」


「……私、あんた嫌い」


「奇遇だな。俺も」



目の前の女は俺を睨みつけながら今度は地面に『嫌い』と書き始めた。本当になんだこいつ。思った事を地面に書く病か？


「女は剣術を習うもんじゃねー。近藤さんがせっかくてめーを引き取ってくれたんだ。手伝いでもいいじゃねーか」



俯いた女にそう言えばピクリと反応した
前髪に隠れて見えない表情。いったいどんな顔をしているのか。棒切れを握る手をぎゅっと強くした女はゆっくりと息を吐くかのように呟いた





「ーー……私、強くなりたい」





震える声でそう言った女に俺はその言葉を否定することも肯定することもせず、ただ



「…へぇ」





そう呟いた







.

【過去編】小さな手→←【過去編】新入り

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す