23話 朝、ひととき ページ23
私は一睡も出来ないのではないかと思うほど緊張していたし、毛の逆立つような雰囲気も味わった。
しかし体は疲れに正直である。一度も目覚めることなく爆睡してしまった。
そして朝、目を擦りながらリビングへ向かうと、既に彼らの活動は始まっているようで、そこにいるのはナランチャとブチャラティさんだけだった。
｢すみません、寝坊しましたかね｣
｢いや、全く。それに早く治すためによく寝ておいた方がいいだろう｣
ブチャラティさんはダイニングチェアに腰掛けてテレビのチャンネルを回していた。ナランチャは眠たいのかパニーニを咥えたままうつろうつろとしている。
｢…あれだけ騒ぎを起こしたのに、ニュースにはなってないんですね｣
｢ああ、金を払ってる。勢力のあるギャングに逆らうほどメディアも勇敢じゃねえからな｣
｢なるほど…ところでパッショーネってそんなに大きい組織なんです？｣
｢知らずに入ったのかお前…｣
えへへ、と舌を出してみるがブチャラティさんは呆れた表情で私の方を振り向く。そしてナランチャのほっぺたをつねって早く食べるよう促した。
｢パッショーネも最近はネアポリス郊外まで勢力を伸ばしてきている。かなりの勢いでだ。｣
｢へえ…なぜなんでしょうね…｣
｢さぁ、な。まあこの話はいいとして、何か食うか？ろくなもん残ってないが｣
｢あ、お言葉に甘えます！｣
ブチャラティさんは椅子に座るよう私に促してから席を立ち、キッチンへ向かう。
｢そういえば、昨日は色々悪いことしたな。疲れてただろうに｣
カウンター越しにブチャラティさんが声を掛ける。私は昨日？と濃密な一日を思い返してみる。
｢あっ、あー…全然構いませんよ。アバッキオさんにはちょっと驚きましたけど…｣
｢はは、あいつにも色々あるんだ、許してやってくれ｣
ブチャラティはビスケットとリコッタチーズを机に置くと、カフェラテの香ばしいマグカップを手に座る。
｢思わずカフェラテにしちまったが…飲めるか？｣
｢の、飲めますよ勿論！｣
本当はコーヒー類はそこまで得意ではなかったが、ブチャラティさんがわざわざ淹れてくれたものを無下にもしたくなかった。
｢それで…他の人達は？｣
｢フーゴはミスタを迎えに行った。ジョルノとアバッキオはそれぞれの仕事を任せているから…昼には帰ると思う｣
｢…もう皆仕事してるんですね…私にも何か出来ませんか？｣
ブチャラティさんはその言葉を待っていたとばかりに大きく頷いた。
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作者名：invisible Comet | 作成日時：2019年4月8日 16時
