22話 ムーディー.B�� ページ22
side アバッキオ
なぜ突発的に自分のスタンド能力をこの小娘に、それもジョルノが傍にいるところで話してしまったのか、自分でも分からなかった。元々誠意のある人間でもない。
しかし結果としてAのスタンド名も、能力も知ることが出来た。
俺のスタンド能力を知られる事、それはつまり弱点を見せることでもある。
Aのスタンドは近距離パワー型。正面で殴り合うことは不可能に等しい。元々サポートに向く能力なのだ。
｢アバッキオ、これで満足したか？Aのスタンドについて知りたかったんだろう｣
ブチャラティの怒りの目の光は消え失せて、いつもの凛とした表情をしている。
｢まァ…充分とは言えねーがこれでお互い簡単に手を掛けることは出来なくなったからな。｣
そう言うとAはあからさまに嫌そうな顔をしてマグカップを傾ける。一種の駆け引きということだ。
｢ふ、お前の疑り深い所は長所だが…Aを見てみろ、あの表情。あんまりいじめてやるなよ｣
｢チッ…あんたが人を信じすぎるからだ｣
俺の言葉にブチャラティは苦笑する。そしてカップを置いてゆっくりと立ち上がった。
｢A、お前はしばらくミスタと休養だな。任務の方は他のヤツらでどうとでもなる。｣
明日から忙しくなるぞ、とブチャラティは陽気に部屋へ戻っていってしまうが、その背中を見つめるAは酷く落胆していて、こいつもこいつなりに役に立とうとしていたのが分かる。
｢じゃあ僕もおいとましましょうかね。Aも痛み止め飲んで早く寝た方がいいですよ｣
ジョルノがそういうとAは小さく頷く。Aは俺と二人きりになるのを本能的に避けようとしているのか、ジョルノが出ていく流れと同じように椅子から立ち上がった。
｢あの、わたし、アバッキオさんに信用されるよう、がんばります｣
振り向いてそれだけ言うと、Aはそそくさと用意された部屋へ入っていった。
｢……がんばる、なんてギャングに入って言うことじゃねーな｣
俺の呟きは、誰も居ないリビングに空虚に響いた。
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作者名：invisible Comet | 作成日時：2019年4月8日 16時
