16話 彼岸の涙 ページ16
side ナランチャ
おれとジョルノとブチャラティがリストランテからアジトへ帰った時、そこにはアバッキオしかいなかったし、そのアバッキオが
｢Aとミスタ、任務は完了したらしいがどちらも負傷したらしい。ったくいわんこっちゃねぇ！｣
と言いながらわかりやすく狼狽するものだから、おれは少し面白くなって笑ってしまった。
もちろん、その後笑い事じゃねえと小突かれたけど。
アバッキオはAからの突然の電話に驚きやがったのかな。
仲間が負傷することなんて日常茶飯事なのに、ブチャラティはアバッキオ以上に落ち着かなかったように思う。おれもちょっとAの事を(女のコだし)心配したけれど、ミスタはいつものことだろ？
｢ブチャラティ、どうすんの？Aはアジトへ向かって来てるんでしょ？｣
｢…Aにアジトの住所は伝えていない。ミスタが無事なら辿り着けるだろうな｣
おれの問いかけに、ブチャラティは心ここに在らずといった感じで答える。
｢場合によってはAもミスタも病院に行かなくちゃあなりませんが…僕が車を出しましょうか｣
ジョルノが気を利かせてブチャラティにそう提案すると、アバッキオが｢お前は余計な事をするな｣と横から言葉を掛ける。
｢既にフーゴを行かせてる。必要ねえ｣
手を打つのが早い。アバッキオはなんだかんだあの二人が心配なんだなぁ、とおれはぼんやりと考えていた。しかし、ブチャラティの顔は暗いままだ。
｢…今回の案件は敵がミスタを負傷させるほどの強力なスタンド使いだとは想定していなかった。オレの不手際だ。｣
｢薄っぺらい委託資料だけで相手の強さが想定できるもんか。あんたのせいじゃあねえよ｣
アバッキオがそう言っても、ブチャラティはどこか居心地の悪そうな表情をしていた。
おれもアバッキオと同じように思うし、実際強い敵だろうがAとミスタで倒せたのだ。見誤りなどあるわけが無い。
｢とりあえずよ、帰ってきた二人を褒めまくればいいんだよ！よくやったなって！おれはブチャラティにそう言われたらどんな怪我でも元気になる！｣
おれがそう言うと、ブチャラティは｢そうだな、ありがとう｣とおれの頭に手を置いた。
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作者名：invisible Comet | 作成日時：2019年4月8日 16時
