決まってた ページ40
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周りの観光客が、俺のことちらちら見てた。
早く泣き止まないとって
思うのに、止まらない。なんだよこれ。
「…玲於くんやだよ……泣かないでよ…」
「……A、」
「……いやだ…」
「…聞いて。……多分俺、今しか言えない。」
「……。」
「……東京着いたら…飛行機、降りたら、…他人になろう。…別れよう。」
袖で涙を拭った。
頬が痛くなるほど強く擦っても、涙はどんどん溢れてきて、拭いても拭いても、濡れて
意味なんてなかった。
「……今なら絶対、やり直せるから。」
「……なにを、やり直すの。」
「…ちゃんと、…ひとりの 普通の女のコとして生きて。…こんな、俺みたいなやつのために、人生無駄にして欲しくない。」
「…無駄なんかじゃないのに。」
「無駄だよ、分かってるでしょほんとは。…俺らもう、子どもじゃない。…好きだけじゃダメなんだよ。」
わからないよって、Aは泣いた。
そんな顔、させたくないよほんとは
傷つけたくない。
でも俺は、Aの泣き顔でしか、Aの気持ちを理解できないから
こんなのが正しいわけない。
こんな俺とAに、この先どんな未来があるんだよ。
何も思い浮かばない。
明日すら、真っ暗で、こんなんじゃ手を繋いでいても歩いていけない。
Aの涙を拭いてあげたいのに
俺は、自分のことで精一杯だった。
「……悠太の、店で…あのとき、ソファーで、…俺ら、出会うべきじゃなかった。…声かけてごめん。全部、俺のせい。」
「…ちがうよ…」
「……Aも、こうなるって分かってたでしょ。」
「……。」
「…アパート解約してない。…俺まだ、合鍵持ってる。…分かってたんでしょ。」
「……ちがう…」
「…いいよ。悪いの、俺だから。」
ちがう、って Aは俯いた。
いやだ、とは ひとことも言わなかった。
…ああほんとに
これが正解だったんだな
俺らって、こうなる運命だったんだ
こいつを
自由の女神を
ふたりで見ようって言ったときから、ここでこうなることは、もう決まってたんだ。
「……柄じゃないけど、俺、ほんと好きだよ。好きとかって簡単に言えないくらい、…ほんとに、特別だった。」
「……玲於くん、」
「……出会わない方が、よかったけど…それでもやっぱ、会えてよかった。お前以上に大事に思えるひと、たぶん一生出会えない。」
言いながら、抱きしめた。
Aの匂いがする。
この柔らかな感覚を、大好きなこの感覚を
俺は、死んでも忘れたくないって思った。
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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか? (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます!!2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした!!! (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー!!!!!と思いました!笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2019年12月1日 22時