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バカなこと ページ33

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「ねー、着たよー。」


暫く待ってたら、ドアの向こうからそんな声が聞こえてきて
スマホ置いて顔をあげる。


「出てきてー。」
「なんか恥ずかしいー。」
「なんでよ。笑」
「すっぴん…」
「いいから早くきてー。」


言うと、ゆっくり開いたドアの向こう
俺が選んだ服着たAが、恥ずかしそうに立ってた。


「……。」
「…なんか言ってよ、恥ずかし…」
「……いやなんつーか……ちょっとかわいいな。」
「あは、ちょっとって。」
「違う違う、その…え?お前かわいくね?なに?」
「うそだ。」
「ほんと。ねえこっち向いてって、」


A、恥ずかしがってすぐ後ろ向くから。
耳まで真っ赤にしちゃってさあ。


「……なんか…なんだろ、お前が彼女だからこんなかわいく見えんのかな。」
「……もーやめて。」
「ふは、なんでそんな照れてんの?」
「玲於くん、そんなこと言うタイプじゃないもん。」
「そんなことって?」
「……かわいいとか…」
「んなことない。」
「どうせ他の子にも、」


言ってるんでしょ、って
いつものノリで言いかけて、口を閉じたA。
一瞬で空気が固まって
まずいと思いすぐに話しかける。


「あのさ、A、」
「……ん?」
「…それ着て、行こう。自由の女神。」
「……。」
「……ニューヨーク、行こう。」
「……ほんとに?」
「…前に言ったでしょ。ふたりで見にいこうって。」


言うと、ゆっくり振り向いてくれた。
その目は涙でいっぱいで。


「ふは、なんで泣いてんだよ。」
「…うれしくて…」
「…バカ、…ほらおいで。」


広げた腕の中に、すっぽり収まる小さな身体。
ぎゅうって抱きしめると、えんえん泣き始めた。
背中を撫でて、大丈夫?って問いかける。


「…くるしいよ、…くるしくて、毎日、今日死んじゃうんじゃないかって、思って、」
「……。」
「……けど、玲於くんの近くで死ねるなら、全然いいよ、……一緒にいられてうれしい。」
「……大丈夫だから。」
「……うん。」
「……Aは、なんもしなくていいから。」
「……うん。」
「……あー、楽しみ。旅行って初めてじゃんね。」


Aの涙が、俺のTシャツに染み込んでいくのがわかった。
カラー剤がついた、俺のTシャツ。


「…メシにしよっか。」
「…うん。」
「今日は俺が作ろっかな。」


笑ってそう言いながら
頭の中ではずっと、さっきのAの言葉が響いてた。

…俺の近くで死ねるなら良いって
なんで、そんなバカなこと考えてんだよ。


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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか? (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます!!2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした!!! (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー!!!!!と思いました!笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年12月1日 22時

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