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朝なんて ページ29

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「玲於くん、」


シャワーの後 洗面所で髪乾かしてたら
Aがひょこっと顔を出した。


「ん?」
「あのさ、…」


声聞こえなくて、ドライヤーをオフにする。
なに?ってもっかい聞くと


「あのさ、もう2時間くらい経ったけど…大丈夫そうだから、染めて欲しいなあって。」
「…えぇ…なんかあったらやだし。」
「大丈夫だよ。」
「…かぶれたりしたらどうすんの。」
「いいもん。べつに…玲於くんにしか会わないから。」


それもそうか、って
俺はまた、独占欲みたいな黒いものに惑わされた。
まだ完全に乾いてない自分の髪は放置して
Aを椅子に座らせる。


「失礼しまーす。」
「お願いします。」
「あっ、イヤーキャップつけますね。」
「はあい。」
「タオル失礼しまーす。」
「…ふふ、2回目だね美容師さんごっこ。」
「え?なに言ってんすかお客さん。この美容室オープンしたの今日っすよ。」


上手なセルフカラーの方法、とか調べて
スマホ見ながら真剣に染めていった。
Aの髪って乾燥してるから、まとめてもパラパラ落ちちゃって大変で。


「…よっしゃ、できた。」
「できた?」
「たぶん…」


もっかい確認しようとしたとき
Aが突然振り向いたから びっくりして
持ってたブラシを落としてしまった。
その拍子に、カラー剤が俺のTシャツについちゃって


「うわ、」
「やだ、ごめんね。ついちゃった。」
「いやこれはべつにいいけど…床がやべえ。笑」
「…わたしが明日綺麗にするから大丈夫!」
「まじで?頼むわ。」


よかったーどうでもいいTシャツで。
汚れた服のまま、道具や薬剤を片付けた。
少しだけ時間置いて、シャワーに行ってもらう。
暫くしたらドライヤーの音が聞こえてきて、洗面所を覗きに行った。


「あ、いい感じじゃね。」
「うん、すごく綺麗な色!」
「めっちゃいい。」
「玲於くん上手だね。」


結局、ドライヤー奪い取って 俺が乾かした。
髪質的に染まりやすいから、ちゃんとアッシュっぽくていい感じ。
良い色だなって思うたびに
俺が染めてやったんだって、満足した。


ドライヤー棚に戻して
乾いた髪の毛を撫でてやると、Aは暫く俺を見つめたあと 黙って俯いた。
ん?って顔覗き込んだら、ぽろぽろ泣いてて


…ああ、なんていうか
多分、理由なんてないんだろうな
わかるよ、なんか俺も泣きそうだから。


その日は、ソファーで抱き合って眠った。
Aの匂いを感じながら、朝なんて来なければいいのにって思った。


.

彼女の特権→←カラー剤



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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか? (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます!!2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした!!! (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー!!!!!と思いました!笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年12月1日 22時

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